本会の考え

「カジノ法案」に対する意見書

カジノ解禁に向けた「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」に対する意見書

カジノを中心に会議場、ホテル、ショッピングモールなどを含めた複合リゾート施設の建設を進める「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(IR推進法案)が12月2日、衆議院内閣委員会で可決されました。与党・自民党は、同6日に衆議院を通過させ、今国会での成立を目指すと報じられています。私たちは、本法案が日本社会に与える深刻な問題に鑑み、反対の意を表明します。

この法案は「複合観光施設」と銘打たれているものの、カジノ解禁を目的にしていることは明らかです。私たちは、カジノによる賭博行為をもとに、経済の活性化や地域の振興を図ろうとする国家運営、加えて、国民に怠惰浪費の弊風を生じさせ、ギャンブル依存症の増加を助長し、青少年に対し反倫理的・反社会的影響を及ぼすほか、反社会的組織の勢力拡大やマネーロンダリングの横行につながることを憂慮してきました。

日本では今日、賭博は刑法で禁止されています。かつてわが国の最高裁判所は、次のように判示しました。賭博行為は、「国民をして怠惰浪費の弊風を生ぜしめ、健康で文化的な社会の基礎を成す勤労の美風を害するばかりでなく、甚だしきは暴行、脅迫、殺傷、強窃盗その他の副次的犯罪を誘発し又は国民経済の機能に重大な障害を与える恐れすらあるのである」(昭和25年11月22日)。

もちろん、現実には特別法のもと、「公営」を条件として競馬・競輪・競艇・オートレースが認められています。また、実質的にはギャンブルと異ならないパチンコ・スロットが全国各地にあります。日本はすでに“ギャンブル大国”と言われており、国内でギャンブル依存症の疑いがある人は536万人に上ると発表されています(平成26年8月厚生労働省研究班)。カジノが解禁されれば、ギャンブル依存症がさらに増えることは想像に難くありません。

カジノの解禁は、目先の短期的な経済効果だけを取り上げて判断できるものではありません。すべての国民の「生命、自由、幸福追求の権利」(憲法13条)に照らして、カジノ解禁が有益か否かを多角的かつ長期的な視点でとらえ、検討することが不可欠です。政治がなすべき本分は、不幸な国民をつくらず、国民の幸福と安寧を図って国を治めていくことにあります。経済的・物質的豊かさだけが、幸せの源泉である――そうした考えを見直さなければなりません。

全国にある本会の教会施設には、ギャンブルを原因とする多重債務、自殺、家庭崩壊といった問題に苦しむ本人や家族から相談が寄せられています。むろん、生活には「娯楽」や「潤い」が必要です。しかし、今、私たちに求められているのは、健康で、文化的にも精神的にも豊かな生活の喜びではないでしょうか。私たちはこれまで、ギャンブルの諸問題に対する啓発活動に努め、依存症に苦しむ人々に救いと癒しの手を差し伸べてきました。今後とも、人々の心の安寧と社会の平安を目指し、「明るく、優しく、温かい」人づくりに向けた、さらなる努力を重ねていく所存です。

私たちは、本法案が日本社会の将来に大きな禍根を残すことを深く憂慮し、重ねて反対の意を表明するものです。

平成28年12月5日
立正佼成会中央学術研究所