宗教法人法改正問題

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●宗教法人法改正問題に対する見解書 (1995.7)

オウム真理教事件を契機に論議を呼んだ宗教法人法改正問題に対し、本会は、1995年に独自の「見解書」をまとめ、教団としての基本的な姿勢を明らかにしました。その「見解書」を次に示します。

 

「オウム真理教」の行った反社会的かつ非人道的な犯罪行為は、国民に大きな衝撃を与えました。この事件を契機として、戦後教育のあり方、国家の危機管理のあり方、宗教法人の活動のあり方など、さまざまな論議が起こっていることは周知の通りであります。
政府・与党は、こうした世論に配慮して、「宗教法人法」の見直し・改正が急務との判断に立ち、宗教法人審議会に諮り十分審議を尽くしたとして、この秋の臨時国会で同法の改正を実現しようという動きを見せています。
いうまでもなく立正佼成会(以下「本会」という)は、宗教法人のあり方が社会から厳しく問われていることについて事の重大性を重く受け止める立場から、また、「宗教法人法」の改正が宗教法人のみならず、現在および将来の国民に極めて大きな影響を及ぼす問題であり、すべての国民の基本的人権にかかわる重大な問題であるという認識の立場から、政府の慎重な取り扱いに期待し、深い関心を払ってまいりました。
本会は、このたびの「宗教法人法」改正問題に関する宗教法人審議会の審議状況および審議の概要を検討した結果、関係各位に対し、本会としての見解を明らかにするとともに、今後に向けての決意を強く表明するものであります。

● 1、「宗教法人法」改正問題についての見解

(1)オウム真理教問題と「宗教法人法」改正問題

もとよりオウム真理教が行った反社会的な行動や、国民の生命・財産を奪い去った数々の犯罪行為は、いかなる理由を以てしても許されるべきものではありません。本会は、オウム真理教の行為に対し、深い悲しみと憤りを覚えるものであります。と同時に、ようやくにしてオウム真理教事件の捜査が本格化し、一部で裁判が始まりましたが、事件の解明と全面的な解決が一日も早く実現することを切に希望するものであります。そして、そのことが何よりも先決であると考えます。
ところで本会は、オウム真理教の事件を直ちに「宗教法人法」の改正問題に結びつけようとすることには同意できません。「宗教法人法」第81条第1項には、宗教法人が「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」あるいは「宗教団体の目的を著しく逸脱した行為」をした場合などに、法人の解散を命ずる規定が明記されています。また、同第86条には、「この法律のいかなる規定も、宗教団体が公共の福祉に反した行為をした場合において他の法令の規定が適用されることを妨げるものと解釈してはならない」との規定があります。
このことからも分かりますように、「宗教団体は宗教法人法によって治外法権のごとく守られていて、宗教団体が法を犯しても、宗教法人法があるために行政は手を出すことができない」という認識は大きな誤りであります。すなわち、オウム真理教事件は現行の「宗教法人法」を改正することなく、本法及び刑法その他の法律を適正に運用することによって、早期に処理することが可能であったのです。
以上の意味において、「宗教法人法」改正問題とオウム真理教問題とは、基本的に区別して論議されることが適当であると、本会は考えます。

(2)「宗教法人法改正問題」について

◎本会は、宗教法人審議会や政府・与党を中心に論じられている改正論議を、直ちに「宗教法人法」改正につなげようとする動きに大きな懸念を抱き、強く反対を表明するものであります。
まず第1に、明らかにされた改正論の概要は、歴史に逆行し、信教の自由・政教分離の原則を侵犯する恐れがあると言わざるを得ません。
現行の「宗教法人法」は、わが国の歴史的な経緯に照らし、また世界に誇る日本国憲法の精神に照らし、よく整備された法律であると本会では考えています。戦前において、国は、伝統的な宗教を公認宗教とし、それ以外の宗教を「類似宗教」「淫祠邪教」などと称して差別し、また、宗教団体を厳しく管理・監督し、当時の軍国主義政策に反対する宗教団体を強権をもって弾圧するなど、宗教への不当な介入を行い、国民の基本的人権である信教の自由を侵害する宗教政策を取り続けました。「宗教法人法」はこうした歴史の切実な反省の上に立ち、民主主義の根幹である信教の自由・政教分離の原則に立って制定されたものであります。
ところが、文化庁がまとめた改正の具体的な内容によれば、宗教法人に対し、認証後の活動状況を定期的に所轄庁に提出することを義務づけ、ことに限定的とはいえ所轄庁に宗教法人に対する「調査権」(「質問権」と称し)を与えようとしています。そこには、宗教団体を国の管理下に置き、その体制を定着させていこうという意図が感じられますが、これはまさに「宗教法人法」制定の趣旨を逸脱するものであり、国が宗教に干渉してきた歴史への逆行以外のなにものでもありません。
第2に、審議会における「宗教法人法」に関する検討の際の基本スタンスによれば、「昭和26年制定以来の社会の変化、宗教法人の実態の変化への対応という視点から、法の見直しを行う必要がある」としていますが、十分実態を調査し、時間をかけて慎重な論議が行われたとは思えません。
宗教法人は全国に18万余、法人格を持たない宗教団体はその数、10万とも推定され、その実態は団体の規模、財産の規模、信者の定義、活動状況、事業の有無など、外形的に把握できる部分だけでも実に千差万別であります。これらの宗教団体の実態の変化について、文化庁はどれほど正確な調査を行ったのでしょうか。十分実態を調査することなしに、各界に慎重論や反対論が多い中で、短期間の内に改正を行おうというのは、あまりに拙速であるとの批判が出されるのも当然といえましょう。
第3に、このたびの改正論議は、当初から政治的意図によって取り扱われ、政争の具に利用されている状況がうかがえるのであります。これこそまさに政治権力の宗教団体への介入を許すことであり、宗教団体が政治の権力闘争に巻き込まれるばかりか、信教の自由を売り渡す結果になることを、私たちは何よりも警戒せねばなりません。
本会は、このたびの「宗教法人法」改正論議に関して、いかなる政治勢力にも与(くみ)することなく、あくまで宗教本来の立場から必要適切な行動を展開したいと考えています。

◎本会は、「宗教法人法」の見直しを全く拒むものではありません。
審議会でも指摘されていますように、昭和26年の「宗教法人法」制定当時とは、社会の状況や宗教団体のありようが著しく変化しており、そうした状況の変化に対応するための見直しはなされて当然であると考えます。
ただし、「宗教法人法」の見直しはきちんとした目的及び方法に基づいて行うべきであり、広く英知を結集し、時間をかけて検討すべき重要な問題であると考えます。また、見直しに当たっては、当然のこととして「宗教法人法」制定の歴史的な経緯や趣旨に鑑みて、信教の自由と政教分離の原則等に十分な配慮が必要であります。
こうした意味において、見直しは、広範な宗教界の参加と各界の参加協力を得て、宗教界の自浄・自主の努力によって行われることが適当であり、そのためにも第三者機関の設置を提案したいと考えます。

●2、立正佼成会の今後への決意

(1)社会からの宗教不信に対して

今日、宗教団体や宗教法人の在り方が社会から厳しく問われていることについて、本会は事の重大性を重く受け止めるものであります。国民の宗教に対する不信感が、オウム真理教事件を契機に一気に表面化し、このたびの「宗教法人法」改正論議につながったものと本会では考えています。
本会はこれを機会に、宗教団体としての本来のあり方を再考し、自主的な立場から「規則」の見直しを図り、より良い教団の改善につなげていくことにより、全会員及び社会からの信頼を一層高めていきたいと考えています。
また、本会は従来、税務調査の受け入れはもとより、所轄庁及び税務当局に対し、教団活動に関する必要な報告を行ってきましたが、今後も更なる透明性の向上に努めていきます。
さらに本会は、一貫して宗教間の対話と協調の運動を、それが宗教の本質であり時代の要請であるとの理念に立って推進してきましたが、「宗教法人法」改正問題によって諸宗教間に不信と対立が生じ、国民の宗教不信がいっそう増幅することのないよう、今後も諸宗教間の対話・協力の運動を推進していく決意であります。

(2)国の宗教への干渉に対して

「信教の自由」は常に国民の基本的人権の最も根本的なものであり、絶対に守られねばなりません。また、「信教の自由」が保障されるには、政教分離の原則が堅持される必要があります。
本会は、今後「宗教法人法」の改正いかんにかかわらず、政教分離の原則が侵されて、国家権力による宗教団体への介入が不当に行われることのないよう、また、宗教団体自身が国家権力を利用したりすることのないよう、十分な監視を行っていく必要があると考えています。不当な介入と判断された場合には、しかるべく行動を展開し、健全な法の運用が行われるよう力を尽くしていきたいと考えるものであります。

以上

平成7年10月

立正佼成会