有事法制問題

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●『有事関連3法』成立に対する申し入れ 全文

「『有事関連3法案』成立に対する申し入れ」

内閣総理大臣  小泉純一郎殿

立正佼成会は、平成15年4月25日、小泉首相にあてて、「『有事関連3法案』に対する意見書」を提出いたしました。その中で、本法案は、武力による安全保障を前提としたものであり、国民の基本的人権の制限、さらには、国際的な共生の道をも閉ざしかねない等の問題点を指摘し、国会での慎重な審議と政府の良識ある対応を要望いたしました。
しかし、本法案は、私たちをはじめ多くの国民が危惧する中、十分な審議も尽くされないまま、6日、参議院本会議で成立いたしました。すべてのいのちを尊重し、人権を擁護し、平和を確立するための道を示していくような法律になり得なかったことは、誠に残念でなりません。
こうした状況に対し、本会としての基本的な考え方を、再度、申し述べたいと思います。
私たちは、いのちを尊ぶ宗教者としての立場から、一貫して戦争を否定してまいりました。暴力に暴力で対抗することは、結局、新たな暴力、永遠に続く報復の連鎖を生み出すことになり、宗教的な智慧、それに基づく慈悲の対応こそが不可欠であることを、先の意見書でも申し述べました。私たちは、武力によって問題解決を図る考え方を決して認めることはできません。

また本法案は、先に述べました通り、十分な国会審議が尽くされず、若干の修正を加えたのみで成立しました。とりわけ危惧いたしますのは、「武力攻撃事態」及び「武力攻撃予測事態」に際して、国民に協力義務を課した上で武力による国家の安全保障を行うことに対し、まったく改善がなされていないということであります。
とくに武力攻撃事態等への対処に際し、制限が加えられ得るとされている国民の自由と権利について、それは「武力攻撃事態に対処するため必要最小限のものであり、かつ公正かつ適正な手続の下に行われなければならない」(武力攻撃事態法第3条4項)と定められていました。この条項は多くの論議を呼びました。
その結果、与党と民主党との協議においては、国民の自由と権利に制限が加えられる場合にあっても、日本国憲法第14条(法の下の平等)、第18条(奴隷的拘束及び苦役からの自由)、第19条(思想及び良心の自由)、第21条(集会・結社・表現の自由)、その他の基本的人権に関する規定は最大限に尊重されなければならない、との条文が付け加えられたのであります。
それによって政府案は大きく改善されたかのように伝えられています。しかし、法的効果という点については政府案と何ら変わらず、基本的人権に対する「必要最小限の制限」は認められております。

この「必要最小限」の名の下に、基本的人権が侵される危険性は、私たちはじめ多くの国民が危惧するところであります。思想、良心及び信教の自由もまた、「武力攻撃事態」のみならず、有事への準備における段階でも制限されてしまう恐れを払拭することができません。
本会は、世界宗教者平和会議(World Conference on Religion and Peace)やアジア宗教者平和会議(Asian Conference on Religion and Peace)を通じて平和構築へ向けたさまざまな取り組みを進めてまいりました。現在、耳目を集めている北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の問題に対しましても、アジア宗教者平和会議では、北朝鮮宗教者の参加を求め、各国の宗教者と対話・協力を行うなどの取り組みを続けてきております。

いのちを犠牲にして、本当の平和を築くことはできません。「武力攻撃事態」とか「武力攻撃予測事態」を論議する前に、このような事態そのものが起こらないようにすべきであります。そのため私たちは、今後も、宗教者をはじめ国内外の心ある多くの方たちと協力し、武力によらない平和構築への取り組みを続けていく所存であります。

政府は、今般の有事法制が行使される事態を回避し、今後のいかなる外交課題に対しても、平和的な解決に向けて最大限の努力をして頂きますよう強く要望するものであります。
合掌

平成15年6月10日

立正佼成会
理事長 山野井克典