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「心穏やかに生きていくには」三法印

 お釈迦さまは、いまから二千五百年前、インドのブッダガヤで、永遠不滅(ふめつ)の真理を悟られました。この悟られた真理の根本となる教えが『縁起』『三法印(さんぽういん)』『八正道(はっしょうどう)』『六波羅蜜(ろくはらみつ)』など、根本仏教といわれるものです。

 お釈迦さまの教えは、いつでも、どこでも、誰にでも当てはまるものであり、教えを日常生活に生かしていけば、毎日を前向きに生きることができ、私たちをより幸せな人生へと導いてくれます。

人は、どのようにしたら、よりよい生き方ができるでしょうか。

三法印とは

  “仏教”と聞くと、どんな印象を持ちますか?
 堅苦しそう…。
 難しそう…。
 お坊さんって感じ。
 中高生の世代は、これらからの将来を意識したり、目の前のテストに苦しんだり、部活やバイトに青春を捧げたり…。普段、生活している中で、悩みや苦しみを抱える瞬間はだれしもあるかと思います。
 苦しみ、悩むことは何も不思議ではありません。みんな抱えながら生きています。その悩み・苦しみを解決しなければいけないものではなく、その苦と同居しながら生きていくために示されたのが、「諸行無常」「諸法無我」「涅槃寂静」について説かれた『三法印』の教えです。  苦しみと同居するってどういうことなのか、見ていきましょう。

諸行無常:ものごとは絶えず変化している

 「諸行無常」とは、「人の心や、この世のすべてのものごとは、いつも変化している」という意味です。
 ものごとは、次々に変化しています。この“変化”というものには、自分にとってプラスに見える変化もあれば、マイナスに見える変化もあります。必要があって変化しているのです。ですから、“変化”自体に善い、悪いはありません。変化しないことが良くて、変化するのが悪いという、固定的な見方をしているうちは、思い込みが激しく、得たものを失うことが怖くなってしまいます。
  本来私たちは、失敗したら悲しくなり、成功すれば喜んだり、心がコロコロと変わる、いわば、不完全な人間です。ですが、その不完全な自分を包容しながら出合いを見てみると、「どんなことも、私に必要があって変化しているんだ」と、真理のまま受け止めることができるのだと思います。
 自分の見方、考え方次第でこれまた状況が変化するとなると「自分から、この状況をより良い方向へ変えていってみよう」と、力をくれるのが、この「諸行無常」の教えです。

諸法無我:すべては関係しあっている

 「諸法無我」とは、「世の中のすべてのものごとは、つながりあっていて、個として独立しているものは一つもない」という意味です。
 なんとなくはわかっているこの真理を、身近なことで考えてみると、学校の帰りに、おなかがすいて友だちとハンバーガーショップに行くとします。ハンバーガー一つ食べるにしても、自然の恵みや農家の人たちの苦労があります。食材を買う人、運んでくれた人、調理してくれた人、売ってくれる人…。たった一つのハンバーガーにも、いろんな人とのつながりが凝縮されています。
 そしてそれは、私たちが生かされている地球環境ともつながり合っているのです。太陽や土、雨などの自然の恵みもその一つです。地球上ではいろんな生命体と共存しています。人間が悪気もなく自己中心的な生活をしていくと、環境破壊にもつながってしまいます。“食する”ということが、一見、環境破壊につながっているなんて微塵も思いません。もし、そのことを知ったら、どんな気持ちが湧くでしょうか。
 例えば、ハンバーガーに欠かせない牛肉。牛を飼育する牧場開発のために毎年世界で多くの森林が伐採されています。バンズに使われているパーム油にも、包み紙の生産にも、熱帯林の伐採が大きな問題となっています。包み紙にはフッ素化合物が利用されており、人体にも、環境にも影響を及ぼすことが知られています。
 一部のハンバーガーショップでは、SDGsの一環として、持続可能な食材調達の取り組みを導入しています。認証された製品に切り替える努力を通じ、変わらず安全で美味しいハンバーガーを提供するとともに、環境に配慮した活動を推奨しているのです。
 きっと、これらのことを知らずに生きていたとしても私たちの生活に何の支障もありません。知ったからこそ、おいしく食べる自分や、環境破壊してまで作らなきゃいいのに…と、かえって矛盾を抱えることになるのかもしれません。
 自分には関係ない、専門の人が、政治家が何とかしてくれる、と他人事にすることも簡単です。しかし、私たちは、知ったからこそできることもあります。環境に配慮されたお店を選ぶ、それがたとえできなくても、つながりを感じて感謝でいただく。そうやって、できることから考えていくことで、自分の価値観や器が広がっていくのだと思います。地球や自然とも、もともとつながっているのだとすると、そうやって葛藤し、悩み、行動してみることは、ごく自然なことだと思います。
 その壮大な物語を経て、目の前のハンバーガーにかぶりつく私たちには、産み育ててくれた両親がいます。両親にも祖父母がいて、いのちのバトンを受け継いでくれました。10代上までさかのぼるだけでも、1024人のご先祖さまがいるんです。果てしなく「おかげさま」のネットワークが広がっています。
 とかく私たちは、自分一人の力で生きているように錯覚するときがあります。一つのハンバーガー、一人の友だち、一つのネット情報…「出合う」ということは、いろんな矛盾や課題を抱えることです。それを私たちは苦しみだと感じています。苦を抱えることは当然なことなのですから、なかったことにするのではなく、取り込んでいく、“そっか、当然なんだ”“悩むって、つながっているから悩むんだ”と、ふと思う努力をしてみると、先入観を持っている自分、固定的な見方をしている自分に気づき、気づいた瞬間、今まで見えていた世の中が違って見えてきます。
 このように、日常の衣・食・住について考えてもわかるように、私たちは持ちつ持たれつの関係で、お互いに生かし合って生きています。 一人では存在できない私たちにとっても、地球にとっても、「必要があって関係している」のです。これが「諸法無我」の教えです。

涅槃寂静:心穏やかに

 「諸行無常」と「諸法無我」の法則がわかり、実践していくと、人生にどんな変化が生じても、常に希望を見いだし、安らかな心で過ごせるようになるというのが、「涅槃寂静」です。
 苦しみがない、悩みがない、解決された境地が「涅槃寂静」ではありません。「より良い方向に変化するよう努力していこう」「持ちつ持たれつなんだから、みんなでよりよくしていこう」という気持ちで生活することによって、矛盾や葛藤を抱えつつ、悩み、深めていくことで、自分の人生がより良く輝いてきます。それが本当の幸せでもあるのです。
 本当の幸せとは、人のために涙を流し、心を痛め、誰かのために努力できる、そんな生き方をすることです。そのために、無駄なんじゃないかと思ってしまうことを丁寧に、真剣にコツコツと行っていく私たちになることが大切なのです。

まとめ

 このように、すべてのものごとは一瞬一瞬変化し、すべてがかかわり合って存在しているのです。これは宇宙の真理であり、いつでも、どこでも、だれにでも当てはまる法則なのです。
 みなさんが「世の中のことには振り回されないぞ」と思っても、その法則に身を任せてみる。生かそうというエネルギーに、身を委ねてみるということを、お釈迦さまは、「必要があって変化している」「必要があって関係している」とおっしゃってくださっています。
 
「この世に存在するすべてのものは必要があって変化していく」
 =良いと思う状態のものも、悪いと思う状態のものも、必ず変化していく

  • どんな状態に変化しても、それに振り回されず、とらわれない自分自身を作る

  • 自分次第で、いかようにも変化させていける

 

  「この世にあるものはすべて必要があってかかわり合って存在している」
 =いま、ここにいる自分は、この世にあるすべての人、ものによって生かされている  

  • 「おかげさま」という感謝の心で一瞬一瞬を過ごす

  • 自分も周りの人も生かしていく行いをする

 

 学校や家庭、友だちとの関係のなかで、自分にとって良いと思うこと、悪いと思うこと、いろいろなことがあると思います。状態や状況、心も体もすべて、私に必要があって変化します。自分が多くのものに生かされていることを自覚し、いまの一瞬一瞬を大切に過ごしていく努力をしていきましょう。そうすることで、悩みや苦しみと同居しつつ、心穏やかに生きていくことができます。
 これが『三法印』の重要なポイントです。