生きるヒント

◆不妊治療中ですが、なかなか子供が授かりません(38歳・女性)

38歳女性です。夫婦で話し合って35歳のときに不妊治療を始めました。さまざまな治療に取り組みましたが、妊娠に至りません。「AID(第三者からの精子提供による人工受精)」という治療もありますが、子供が自分の出生の真実を知ったらと思うと不安は尽きません。ですが、どうしてもこの手にわが子を抱きたい。「母になる」という女性の役割を全うし、父親になる喜びを夫に味わわせてあげたいとも思うのです。夫は、やはり血のつながりが気になるようで、考えさせてほしいと言います。自然の力に逆らってでも子供を授かりたいと思う私は、わがままなのでしょうか。

◇回答者 園浩一

 結婚以来、愛するご主人の子供を授かりたいと長い間願ってこられたことでしょう。子供を欲するあなたの思いは命あるものとして自然なことであり、女性の本能とも言えます。ご主人と一緒にさまざまな不妊治療に取り組む中で、期待と挫折を繰り返し、<わが子を>と願いながらもかなわない、深い悲しみを味わってこられたのだと思います。一つひとつの治療が自分の体を傷つけても、ご主人に喜んでもらいたいと願うあなたの心が、痛いほど伝わってきます。

 無量義経十功徳品に『愛著ある者には能捨の心を起さしめ』とあります。自分の身の回りにあるものに対して、愛情を感じることは当然のことですが、その思いに執着してしまう(愛著)と、心にしこりができて、さまざまな悩みが生じてきます。もし、捨てるべきときにはいつでも手放せるという心境になれば、心は自由自在でとらわれがない(能捨)ため、安心して生活できます。それは、無いものを欲しがらず、今あるものに感謝することから始めるものと言えます。

 「考えさせて」というご主人の言葉の中から、今日まであなたの思いに寄り添い、共に歩んでくださった優しいご主人の心の声を聞いてみてください。そして、この機会を通して他人と比べることのない人生観を、夫婦で見つけるチャンスにして頂きたいと思うのです。

 また、広い視野で世の中を見ることも大切です。佼成会のサンガの皆さんは、さまざまな困難を乗り越えられています。先輩方の豊かな人生経験を聞かせて頂くと、多様な生き方に触れることができます。どうか世間の価値観だけにとらわれず、人類が歩んできた歴史から、そして、未来を歩む子供の立場から考えてみてください。仏さまのものの見方をサンガと共に学び、実践する中でとらわれない心が開いてくることでしょう。

 あなたも、ご主人も、生み育ててくださった両親、いのちをつないでくださったご先祖さまがいたからこそ、この世に存在し、そして巡り会えた。あなたがわが子を強く望むように、あなたの両親もまた、あなたの誕生を願い、深い愛情で育ててくださったことが分かります。あなたがこの先の治療を悩まれているのも、いのちの尊さに気づいているからではないでしょうか。すぐに答えは出ないかもしれません。それでもいいと思います。今ある幸せに目を向けて、夫婦の時間を大切に過ごして頂きたいと思います。