生きるヒント

◆ 嫁に家を追い出され施設で生活しています(80代・女性)

夫が若くして亡くなって以来、働きながら子を育ててきました。夫が遺(のこ)してくれた土地に二世帯住宅を建て、長男家族と20年間、一つ屋根の下に暮らしてきましたが、長男から、「すまないが施設に入居してほしい」と泣きながら言われました。長男の嫁が「お義母(かあ)さんが家を出ないのなら離婚する」と訴えてきたとのことで、仕方なく私は施設の個室に入居しました。長男は毎週末、訪ねてきてくれますが、嫁や孫たちは一度も顔を見せてくれません。嫁に対する怒りが収まらず、こんな気持ちでご宝前に向かうのは、仏さま、ご先祖さまに申し訳ないという思いでいっぱいです。

◇回答者 園 浩一

ご主人亡き後、懸命に働いてお子さんを育ててこられたのですね。お母さんが苦労する姿を見てきた長男さんですから、お母さんの心をよく理解していらっしゃいます。「おふくろは本当はこの家に住んでいたいんだよな」と。その願いをかなえてやれず申し訳ないという思いから、せめて自分だけでもと毎週のように訪ねてきてくれるのでしょう。

 

 住み慣れた家に戻りたいし、お嫁さんともうまくやっていきたい。そのための努力を私はしてきたつもりだけど、お嫁さんはいつも身勝手で一方的だ。お嫁さんが心を入れ替えてくれれば、家に戻ることもかなうのに――仏さまは、そうした私たちの「執着」こそが苦しみのもとであり、手放さなければ幸せになれませんよと教えてくださっています。ただ、そうは言っても、なかなか手放せない。だから苦しいのですよね。

 

 あなたが頑張って生きてこられたことは、仏さまも、亡くなられたご主人もご照覧です。仏さまはあなただけでなく、あなたの周りの人も含めて、皆が幸せをつかむようにと願っておられます。今、あなたがいる場所を「お嫁さんに追いやられてきた場所」と見るか、「仏さまが与えてくださった場所」と見るか。そこが幸・不幸の分かれ目です。

 

 自分に与えられたところが道場です。そこで仏を目指すのが、私たち仏教徒の生き方です。

 

 お一人暮らしの寂しさがおありのようですが、私には、あなたが、仏さま、ご先祖さま、そして最愛のご主人と一緒に暮らしていらっしゃるように思えてなりません。そのお部屋は、誰に気兼ねすることもなく、ご先祖さまとも対話できて、訪ねてくれる人とも楽しく会話できる、最高の空間なのではないでしょうか。

 

 資金があり、空室が見つかったから入居できた。ご宝前もご安置できて、優しい長男さんも通ってきてくれる。健康で、毎日、思う存分に読経ができる。そんな、すでに頂いている有り難いこと、うれしいことを綴(つづ)る「えびす帳」づくりをされるといいですよ。感謝で心が満たされれば、怨(うら)み心は雲散霧消していきます。

 

 お釈迦さまは、ご自分の命を狙う提婆達多をも「善き友」として拝まれました。どんなご縁も拝んでいくことで、私たちも仏に近づけるのです。

 

 霊界で案じてくださっているであろうご主人に安心して頂く意味で、追善供養をまずは長男さんと一緒に始められてはいかがでしょうか。ご先祖に感謝して、今いる場所で喜んで生きる。そうしたご自身の生き方を通して、長男さんはじめご家族に、み教えが伝わっていきますよう心から祈念しております。