生きるヒント

◆ 振り込め詐欺で生きる気力を無くしました(69歳・女性)

振り込め詐欺に遭い、老後の蓄えを失いました。「会社の経費を使い込んだ。助けてほしい」という長男を装った電話にだまされたのです。義務教育しか受けていない私は、よい大学を出て有名企業に入ることが幸せと考え、長男に猛勉強させ、本人のやりたいことを何もさせず私の思い通りに育てました。その反発からか、独立後は連絡もよこさず不和が続いています。「せっかく、頼ってくれたのだから、これを機に長男とやり直したい」との気持ちが働きました。せめてもの救いは長女がたまに訪ねてくれるようになったことくらい。食欲もなく毎日滅入るばかりです。

◇回答者 出射優行

まさか、ご自分が振り込め詐欺に遭うなど想像もしなかったことでしょう。ショックはいかばかりか、と推察いたします。親心や人の善意に付け込む詐欺には、甚だ義憤を覚えずにはおれません。

 

 つらい胸の内を娘さんが聴いてくださることは、あなたの苦しみを癒やす心の支えとなったでしょう。落ち込むこともあるでしょうが、気をしっかり持ってください。

 

 眼前で苦しむ子を助けたいと手を差し伸べることは親として当然の行為と言えます。ただ、少し落ち着いて考えてみると、経費を使い込み穴埋めしてほしいと頼んできた子供に対して、親の愛情が煩悩に換わっていたのかもしれません。疎遠になった息子さんからの急な要請と受けとり、冷静な判断が鈍ったのでしょう。相談を寄せて頂けたことは、同様の被害に遭った方々を励まし、詐欺を防止する注意喚起につながります。

 

 私も人の親として共感するのですが、ともすると親は自分が成し得なかった人生を子に投影し、期待のあまり押し付けてしまうところがあります。過去を後悔しておられるのかもしれませんが、幸せを一心に願って息子さんを育てられ、社会人として立派に自立しているのですから、ご自身を責める必要は全くありません。憎むべきは親心を踏みにじる詐欺。ですが、この苦い体験を息子さんとの絆を取り戻したいという願いに気づくための貴重な機会と受けとめられてはいかがでしょうか。「長男とやり直したいとの気持ちが働いた」と告白されていることからも、この体験を通して、仏さまから、おはからいを頂いたのだと感じます。

 

 今は、背を向けている息子さんの思いを受けとめ、深く内省してみることをお勧めします。詐欺に遭った事実も含め素直な心境、親のサンゲを手紙にしたため、勇気を出してご本人に送られるとよいと思います。正直な心をさらけ出すと胸が晴れるものです。どうか、息子さんを信じてください。正直で優しい親心は年齢を重ねるほどに染み込んでいくものですし、こちらの思い過ごしで、すでに息子さんはあなたの愛情に気づいておられるかもしれません。経済的にも精神的にも、互いに自立した素晴らしい親子関係を築いてこられたと思います。

 

 息子さんとあなたは根っこでつながる親子です。お二人が手を結び合えることを祈念しています。