生きるヒント

◆ 父が不倫をしていました(24歳・男性)

父が母以外の女性と付き合っていました。発覚したのは一年ほど前です。数年にわたり付き合っていたようで、そのことで両親がたびたび言い争いになりました。母に責められた父は「彼女とは別れた」と言っていますが、実際のところは分かりません。両親ともに今は離婚をする気はないようですが、母は「自分が鬼になってしまうのがつらい」と言います。家族の会話はなくなりました。互いの愛情が冷めてしまったのなら離婚してもいいのではという思いもありますが、両親に何と声を掛けたらよいのか分かりません。

◇回答者 菊池 宏枝

 ご両親が仲たがいをしているのを見るのは切ないものです。これまでずっと、あなたのご家庭は、家族の明るい会話にあふれていたのでしょう。あなたがお母さんから頼られる優しい青年に成長したことからも、そのことがよく分かります。

 

 お母さんにしてみれば、心を傷つけられたことへの悔しさ、許したいけれど許せないという思い、そうした感情を自分の中だけにしまっておくのはとても苦しいことでしょう。つらい気持ちを吐露できるあなたがいてくれることが、どれほど大きな救いになっているか知れません。

 

 「鬼になってしまうのがつらい」というお母さんは、ご自分のことを外から静かに見つめる目をお持ちです。怒りに翻弄(ほんろう)されることなく、本来の自分の尊さを自覚しておられます。鬼ではなく、家族を温かく見守る観音さまのような存在でありたいという願いがそこに感じられます。

 

 これはお母さんが歩んでこられた仏道修行のたまものであり、仏性の発露だと思うのです。どうか、お母さんの気持ちを聴き切ってあげてください。聴いてもらうことによって、お母さんの心が定まっていくはずです。

 

 また、お父さんに対しては、「彼女とは別れた」と言っているのなら、その言葉を信じましょう。両親の幸せを心から願っていることを伝えてみてください。あなたの優しさに、きっとほっとされることでしょう。

 

 「すべての物事は必ず変化する」のが仏さまの教えです。あなたの目から見てお父さんが女性と別れたかどうか実際のところは分からないということであっても、お父さんの心と、お父さんを取り巻く人間関係は必ず変化しているのです。それはお母さんについても同様です。

 

 ご両親はこれまでにも、夫婦として年月を重ねる中で、大波小波、さまざまに体験し、苦労を共にしてきたはずです。ご両親ともに離婚は考えていないということですから、お互いにもう一度、夫婦としてやり直したいという気持ちなのでしょう。その思いがあればきっと、この大波も乗り越えていかれるのではないでしょうか。

 

 大切な、かけがえのないご両親がこの波を乗り越えていけるよう、あなたから家族に明るく声を掛けてください。愛するわが子の「おはようございます!」は、ご両親をきっと勇気づけるはずです。あなたの思いやりが親孝行になるのです。