生きるヒント

◆認められず、会社に必要とされていないのではと悩む日々(35歳・男性)

35歳の男性です。広告代理店の営業を担当し、今年で10年になります。不況の影響で新規契約が取りにくくなりましたが、私なりにやりがいを持って取り組み、いくつか大口の契約を結んだこともあります。しかし、どれだけ頑張っても上司の反応は冷ややかで、最近では入社して間もない後輩が大手企業を任され、私は経営状況の厳しい中小企業を回る毎日です。そのため、営業成績にも差が出て、後輩から「給料泥棒」と陰口を言われています。焦る気持ちもありますが、それ以上に自分が会社に必要とされていない、誰にも認めてもらえないと落ち込みます。人さまと触れ合う営業という仕事に誇りを抱いてきましたが、いっそ転職した方がいいのかと、悶々とした毎日を送っています。

◇回答者 松本貢一

厳しい広告業界で、あなたは営業の仕事に誇りを持ち、懸命に努力されています。その姿が素晴らしいと思います。それだけに、上司の采配に対して自分の存在価値を否定されたように感じ、悩んでいるのですね。

 一つ申し上げたいのは、上司は決してあなたを否定しているわけではないということです。むしろ、10年間さまざまな経験を重ねてきたあなただからこそ、難しい企業を任せても大丈夫だと信頼されているように感じますが、いかがでしょうか。

 開祖さまは「職場生活即仏道修行」と教えてくださっています。仕事をする場所はそのまま、自らの人格を完成して仏となる修行の場であるということです。自分にとって不都合な状態の時こそ、器を広げるチャンスなのです。

 現代を生きる私たちに大切な仏道修行の一つに「忍辱」の心があります。さまざまな侮辱や裏切りに対して怒りや恨みを抱かない、そして、人におだてられても有頂天にならず、自分を省みることです。相談の中に、「いくつか大口の契約を結んだ」とありますが、どこかで<自分の力でやった>という気持ちがありませんか。その成功の裏には、会社の信頼を築いてきた先輩の努力、良い営業マンになってほしいという上司の願い、相手企業の理解などさまざまな支えがあったはずです。そうした縁の中にある自分を自覚すると、成績が良いときも悪いときも「おかげさま」と思えてきます。

 営業の世界に身を置く厳しさは容易には計れません。しかし、すべての物事は常に変化します。人生も同じ。自分の実力を外に向かって発揮するときもあれば、逆境に耐えて自分の内面を充実させるときもある。人間はそうやって実践と内省を繰り返して成長していくのです。

 ただ、営業という仕事は、業績によって給料やボーナスが変動する「歩合給」の場合があります。簡単に割り切れない気持ちもあるでしょう。転職を考えるのも分かります。しかし、「今」という時を自分の成長につなげるために、もう少し、今の職場でおかげさまの中にいる自分をかみしめ、上司や後輩と触れ合ってみてはいかがでしょうか。

 苦悩や葛藤こそ人間を成長させるもの。仏さまから頂いた課題を一つひとつクリアしていったとき、あなたの人間性はさらに深みを増し、魅力的な営業マンになっているはずです。