大聖堂ライブ配信

2020年10月4日 体験説法「開祖さまを偲んで」

常務理事 佐藤益弘

 

皆さま、お願いします。

「開祖さま入寂会」におきまして、体験説法のお役を賜り、誠にありがとうございます。

 

私は、学林を卒林したのち、団参課を経て、昭和58年12月1日から秘書のお役を頂戴しました。当時は、開祖さまと会長先生の秘書としてお仕えするという、私にとって誠にもったいないほどのお役でした。しかし、有り難いお役とは思いつつも、心から有り難いという気持ちではありませんでした。

 

そのように心が定まらないまま翌年の夏、波木井山圓實寺「川施餓鬼法要」に会長先生のお供をして山梨県の身延へ参りました。そこで、開祖さま、脇祖さまご在世中に佼成会とのご縁を深められた波木井山のご住職・岩田日成(にちじょう)ご上人に、私は名刺を差し出し、「このたび秘書のお役を頂きました佐藤と申します」とご挨拶申し上げました。

すると、岩田ご上人が、「あなた、佐藤さんというの、今世、開祖さま、会長先生の秘書のお役をさせて頂けるというのは、ご先祖のお徳以外なにものでもありません。よくよく感謝して務めなければなりませんぞ」というお言葉を頂きました。

 

それまでの私は、たいして能力もない自分には、秘書というお役は向いていないなどと言って、職場の先輩を困らせたりしていました。優しい先輩は、そんな私に、アメリカの秘書協会が作成した『秘書の心得』というものを書き写して渡してくださるなど、いろいろと心配し、大丈夫と励ましてくださいました。しかし、それでも逃げ出したい気持ちが残っておりました。そんなとき、岩田ご上人とのご縁を頂いたお陰さまで、ようやくお役に対する感謝の念を持たせて頂き、前向きな気持ちに切り替えることが出来たのであります。

 

それからは、数々の失敗を重ねながらも、開祖さま、会長先生の大いなるお慈悲を頂いたお陰さまで、平成10年11月末まで、秘書のお役を務めさせて頂きました。本日は秘書としてお仕えしたころの開祖さまを偲んで、説法させて頂きたいと存じます。

 

かつて、開祖さまが松緑神道大和山教団へお出かけになられた時のことです。東京から新幹線で青森へ行き、その日は青森市内のホテルにお泊りになりました。開祖さまのご出張中は、国内でも、海外でも、朝のご供養の中で、三部経のその日のお経を読誦することが決まりになっていました。たとえば、2日なら方便品第二、3日なら譬諭品第三を読誦いたします。

 

それで、大和山さんへお出かけになる前日、この日は6月6日でしたが、私は一計を案じました。明日は7日なので、朝のご供養は『化城喩品第七』となる。七番は長いから、普段以上に早起きとなる。開祖さまも今年は卒寿を迎えていらっしゃるし、ホテルの出発予定時刻から逆算すると、朝5時前に起床せねばならない。ならば、三部経の頁数が少ない八番のお経を7日にあげて、8日に頁数の多い七番のお経をあげてはいかがか…という極めて合理的な入れ替え案を、私から提案させて頂いたのです。

 

表向きは、開祖さまのご年齢も考えてなどと体裁(ていさい)のいい話ですが、正直なところ、私が早起きしたくなかったのでした。それを見通されたかのように、開祖さまは「明日は7日だからご供養は七番『化城諭品』!」とハッキリおっしゃいました。

 

開祖さまは、一度、決められたことは、やり続けられました。特にご法のことに関しては余程のことがない限り、変更されませんでした。私は、開祖さまの「7日だからご供養は七番!『化城諭品』!」というお言葉を伺い、条件によって簡単に変ようとする自分と、懈怠(けだい)の心が時々頭をもたげてくる自分を恥じつつ、反省いたしました。さらに、仏さま中心という信仰の基本を大事にすることが、生活のリズムを整えることに繋がるということを教えて頂きました。

 

私がのちに教会長のお役を頂いたときに、その学びのお陰さまで、午前9時からは、努めて教会の法座席に座り、ご供養に続いて、法座修行をさせて頂くことを心掛けました。さまざまな用事があっても、まずはお経をあげさせて頂くことによって、その後のなすべきことがスムーズに運びます。このような体験からも、本会基本信行の一つであるご供養が本当に大事であることを実感しております。

 

また、会長先生からも「型」を身につけることが大切と常々ご指導頂いております。「挨拶をする、合掌・礼拝や朝夕の読経供養も大切な『型』であり、そうした実践を続けることで、常に思いやりと感謝の心で生きる自分になれる」と、会長先生は教えてくださっています。この青森の地で開祖さまから身をもって教えて頂いた「型」の大切さを忘れずに、思いやりと感謝の心で生きられる自分をつくるべく精進してまいりたいと存じます。

 

次に、開祖さまからお叱りを頂いた体験をお話ししたいと思います。それは、法燈継承の前年にあたる平成2年のことでございました。この年、開祖さまは殊の外お忙しく、夏休みもないほどでした。7月に「子どものための世界宗教者平和会議」(主催=WCRP国際委員会)に出席されるためアメリカへ出張され、9月にも、再度アメリカへお出かけになることが予定されていました。その間、国内でも比叡山宗教サミット、さらに波木井山・川施餓鬼法要にお出かけになるなど、多忙な毎日を送られていました。秘書たちは開祖さまのお身体(からだ)を気遣い、特に教団内に関するご予定は必要最低限にとどめるよう、日程調整を図っていました。

 

そんな中、9月2日の朝、大聖堂にお見えになった開祖さまが突然、「これから横須賀教会の団参で法話に立つよ」とおっしゃり、秘書たちはびっくり仰天しました。実は横須賀の教会長さんから秘書課長さんに対して事前に、普門館の団参で開祖さまからご法話を賜りたいとのお願いがありました。しかし、団参が実施される日の午後には、勧請式でご法話を頂くことになっており、普門館にお出ましになると、午前も午後もとなってしまうため、全体の日程から考えても無理であると、秘書課長さんはお断りをしていたのでした。

 

そんな事情であった為、周囲は開祖さまをお停めしようとしましたが、なかなかご納得されず、その経緯について詳しく聞きたいということになりました。ところが、あいにくと秘書課長さんは休暇を取られていて、その次に詳しく事情を知っているのは誰か?ということで、私が開祖さまの御前に馳せ参じ、その場の雰囲気をよく理解しないまま、「先生のお身体を考えましたら、きついスケジュールを組むわけにはまいりません」と、お断りしたいきさつを縷々説明させて頂きました。

 

その直後に開祖さまはいつになく厳しい表情で、「そういう役人のようなことを言っているからいけないのだ」とおっしゃいました。そして、こうお話しを続けられました。「5千人もの信者さんがご法を聞きに本部に集まってくる。聞けば、講話をする理事の体調がよろしくないらしい。話をする人がいないなどという、本部がそういう不親切なことではいかんのだ。私の都合がつけば出てあげる。私の身体はどうなっても構わない。それよりも、信者さんを喜んで帰してあげなければならない」と私を諭すようにおっしゃったのでした。

 

その時、私はこう思いました。開祖さまの信者さんを想われるお心も知らず、前例がないとか、ご無理は絶対にさせられない等という考えに固まっていて、時と場合によって対応する柔らかさがない自分であったことを深く反省いたしました。同時に、法華経勧持品第十三にある「我身命を愛せず 但無上道を惜む」というお経文が思い浮かびました。まさに我が身、命をも惜しまず正法弘通(しょうぼうぐつう)のために生き、慈悲に生きる真の布教者としてのお姿を拝したものと思いました。

 

実は、その時もう一つ思ったことがございます。それは、私が新米秘書の頃に先輩が、「開祖さまから叱られることは滅多にないが、もし叱って頂いたら、赤飯を炊いて喜ぶくらい有り難いことです。それだけ身内の者と思って頂けるようになれたのだから…」といわれていたことを思い出し、私自身ひそかに喜んだ出来事でもありました。

 

結局、その日、開祖さまは午前中に普門館でご法話を述べられ、午後も予定通り大聖堂での勧請式にお出ましくださいました。このような尊きご縁を賜ったお陰さまで、教会長のお役を頂いておりました時に、信者さんに喜んで頂けるよう、我が身を使わせて頂こうという心構えをもってお役を務めさせて頂くことが出来ました。お陰さまで教会から遠く離れた支部や、黙々と修行されている信者さんのところへ、すすんでお伺いし、お互いに学びあい、信仰を深めさせて頂くことができました。このように至らないながらもお役を務めさせて頂けましたのも、偏(ひとえ)に開祖さまの温かいお慈悲によるものと、あらためて感謝を申し上げる次第でございます。誠にありがとうございました。

 

今、新型コロナウイルスの感染拡大により、さまざまな不安を抱えながら毎日を過ごしている状況です。そんな今こそ、光祥さまのご著書『開祖さまに倣いて』の100ページのところにあります開祖さまのお言葉をお互いさまにかみしめたいと思います。それは、「自分を後にして、人のために動いてごらん。親に感謝してごらん。忙しいなか、時間をつくってご供養してごらん。そういう心になれば、安心して生きることができるよ。喜びの多い人生が歩めるよ」というお言葉です。このとおり一日一日を過ごさせて頂くとで、世の人々が安心して生きることが叶うものと信じます。

 

私自身、そのような精進をさせて頂き、これからも仏さま、開祖さま、会長先生の証明役を果たさせて頂きたいと願っております。さらに、一人でも多くの方々と共に大乗菩薩道を歩ませて頂けるよう、布教伝道に力を尽くしてまいりますことをお誓い申し上げ、本日の説法を終わらせて頂きます。

皆さま、ありがとうございました。

 

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