大聖堂ライブ配信

2020年8月1日 朔日参り

次代会長 庭野光祥

 

皆さま、お願い致します。

 

今日も朔日参り、布薩の日の導師のお役、有り難うございました。

8月に入り、東京もようやく梅雨明けを迎えようとしています。今年は梅雨が長引き、各地に大雨による被害がもたらされました。被災された皆さまに、心からのお見舞いを申し上げます。

 

毎年、この時期になると、ある方のことを思い出します。

 

私がTさんにお会いしたのは、今から12年前、2008年9月でした。その年の4月から始まった青年本部参拝の「婦人部大法座」に参加されていたTさんのために、教会の婦人部のお仲間が皆で一斉に手をあげられ、Tさんはお話してくださることになりました。

 

Tさんはその2年前に、とても不幸な事件で、当時小学2年生だったお嬢さんを亡くされました。それは私の想像を絶する出来事でしたが、同じ年頃の娘を持つ母として、Tさんの悲しみが私の心にも染み込んでくるようで、胸が苦しく、痛みました。

 

法座の最後に、お嬢さんがどんなお嬢さんなのか、Tさんにお話しして頂きました。Tさんは、可愛くて大切なお嬢さんのことをたくさんお話ししてくださり、その日、そこに同席していた1000人を超える参加者の皆さんと私は、涙を流しながら、なんだかTさんのお嬢さんとお会いしたような、知り合うことができたような気持ちになりました。

その時、私は「今お嬢さんのことをお聞きして、ここにいる私たちは、これからもお嬢さんのことを思い出しますね」とお約束しました。

 

昨日で事故から14年が経ちました。お嬢さんの祥月ご命日は、7月31日です。

Tさんとはその時にお会いしたきりですが、Tさん、どうしていらっしゃるかなぁ、今年はお嬢さんが21歳になられる年だなぁと、今年もTさんとお嬢さん、そしてTさんご家族のことを思っています。

 

さて、新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、佼成会でも長い間、教会が閉鎖となりました。感染状況が落ち着いたように見えた6月の終わりから7月にかけて、少しずつ解除の方向で各教会が動き始めていましたが、このところ、以前よりも速いペースで感染が拡大しており、東京は昨日、過去最高の感染者数。他の地域でも同様の傾向を示しており、残念ながら教会の再開はもう少し先になるかもしれません。

 

このように長期間、教会に参拝することができなくなり、皆さんの生活はどのように変化したでしょうか。

 

ずっと前に、こんなお話を聞きました。

詳しい経緯についてはうろ覚えなのですが、確かその方は教会の教務員さんだったでしょうか。長年、毎日組として熱心に教会に通われていました。ところがある時、お父様に多額の借金があることが分かりました。確か工場を経営されていたお父様で、当初は設備投資のために借金をされたのですが、その後の資金繰りがうまくいかず、もしかしたら誰かの借金の保証人だったかもしれません。はっきりしたことが思い出せずに申し訳ありません。ただ、結果的に1億円近い借金があることが分かったのです。

 

4人兄弟の長女だった教務員さん、仮にAさんとしましょう。Aさんには「何でこんなになるまで言ってくれなかったのだろう」と責める気持ちもありましたが、多額の保険をかけていたため、お父様が自殺するのではないかと心配で心配で、とにかくいろいろ調べ、兄弟でお父様に自己破産するようにお話ししたそうです。けれど、お父様は首を縦に振りません。絶対に自己破産はしない、と。

どうしたら自己破産してくれるだろうか、自分はどうしたらいいのだろうか、と法座でオロオロと取り乱しながらお話されたそうです。

 

その時、法座主を務めていた本部の講師さんはAさんにこう聞きました。

「あなたはこれまで毎日教会に来ていたそうですが、教会に来て何をしていたんですか? こういう時にオロオロしないで、腹を決められるためなんじゃないですか?」

 

ハッとしたAさんは、我に返り、よく考えてみたそうです。毎日教会に通ってお役をしているだけで、何か修行をしているような気持ちになっていたけれど、自分は本当は何のために教会へ通っていたのか。教会で何を学び、何を身につけ、どんな生き方ができるようになったのか。それは自分の人生に何をもたらしたのだろうか。

 

家に帰り、教会で学んだこと、つまりご自身が教務員として日頃説いていたことを反芻してみました。すると、少しずつ心が落ち着き、今度はその落ち着いた気持ちでお父様のお話を聞くことができたそうです。すると、お父様はなぜ自己破産をしないのかを話してくれました。自分が自己破産すると、事業を継いでくれている息子、つまりAさんの弟さんに悪影響が出てしまうため、ということでした。

 

いくつになっても子供のためを思う親心に打たれたAさんは、弟さんも含めた兄弟4人で話し合いをしたそうです。そしてその結果を、次の月の法座で、同じ講師さんにご報告されました。それはこんなお話でした。

 

お父様の借金は、それぞれの配偶者にも理解してもらって、兄弟四人で返済していくこと。ただしそれは、お父様の借金を肩代わりをして返済する、という意識ではなく、これまで愛情をかけて、何不自由なく育ててくれたお父様へ、毎月子供たち皆で感謝のプレゼントをする気持ちで払っていこうと決めた、ということでした。

 

そうと決まれば、返済の計画を立てなければなりません。そこで弁護士さんに入ってもらい、整理してもらうと、8500万円ほどあった借金が、実際には3000万円ほどの返済で済むことが分かり、その後10年もたたないうちに完済できたそうです。

 

私たちはつい、8500万円もあった借金が3000万円で済んだことに目がいき、それがお計らいのように思ってしまうのですが、実はここで大切なのは、オロオロしない心境になれたこと。落ち着いて現状を見て、なぜそうなってしまったのか、その経緯、つまり因縁をしっかり聞き、理解することができたこと。そして、同じ信仰を持つ兄弟が、それを「お父様へのプレゼント」として、感謝で、喜んで払おうと思えたこと。

この見方の転換が、毎日教会へ通われていた功徳、ご法を学ばれた功徳なのだと思います。

 

自分の人生に、また出会った人の人生に豊かな価値をもたらすための稽古場。それが教会です。教会以外で発揮できなければ、何の意味があるでしょう。

 

コロナで教会が閉鎖された今だからこそ、教会で学んだこと、身につけたことを発揮する場があるはずです。教会が閉鎖しようが、感染が拡大しようが、人間の因縁は動き続け、待ってはくれません。実際に会うことのできる人は限られていますが、困っている方はいるはずです。今こそ因果の理法を知り、法華経を学んだ私たちの、実践の時ではないかと思います。

 

実際にやってみると、うまくいったこと、いかなかったこと、分からなくなったこと、難しかったことなど、たくさんの問いが出てくると思います。そんな問いをたくさん貯めて、教会再開の暁には、法座で教会長さんに山のように質問をして、たくさん結んでいただき、また次の実践のパワーにしていただけたらと思います。きっと教会長さん方も今、そのためのエネルギーをチャージし、智慧を磨きつつ、教会再会に備えていらっしゃることと思います。

 

本格的に暑い季節となります。どうかお元気でお過ごしくださいますよう、お祈り申し上げまして、本日のご挨拶とさせていただきます。

 

皆さま、ありがとうございました。