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2016年2月28日

日本臨床宗教師会設立記念シンポジウム 苦悩に向き合う心こそ


髙木氏は、臨床宗教師こそ、日本の宗教を取り巻く現状に革新をもたらす光であると力説しました

東日本大震災の発生後、被災地では家族や友人、生活を奪われて悲しみに暮れる被災者に対し、宗教者による心のケアが展開されてきました。布教を目的とせず、被災者の「死」に対する疑問や苦悩に真摯(しんし)に寄り添い、向き合う宗教者の姿に、生きる希望を見いだす被災者も少なくなかったといいます。
こうした経験を踏まえ、宗教的な心のケアを専門とする公共性を持った宗教者を育成しようと、2012年から東北大学で「臨床宗教師研修」が進められてきました。震災から5年となる今年、「臨床宗教師」の活動の普及と資格認定を目指す全国組織「日本臨床宗教師会」が設立されました。2月28日には、京都市の龍谷大学大宮キャンパスで設立記念シンポジウムが開催されました。

当日は、『臨床宗教師が、日本社会に根付くための教育』をテーマに上智大学グリーフケア研究所特任所長の髙木慶子氏が基調発題に立ちました。冒頭、同会の設立は「新しい宗教革新」であると分析。これまでの「宗教改革」では宗教宗派間に対立と分断を生み出してきましたが、人間の「生の現場」に自ら出向き、人に寄り添う臨床宗教師こそ、現代人が宗教に求めている姿であると述べました。
また、日本人の多くが持つ宗教に対する偏見を正し、信頼を取り戻すためにも、宗教者一人ひとりの「質を上げる」ことが必要と指摘。宗教者とは職業ではなく身分であり、社会的な道徳、倫理に沿った模範的な生活を「自ら選んだ人」と強調し、「日本の宗教界においてその自覚の無さが問題。私生活でもその使命を忘れず、自らの心を神仏に照らし合わせて常に祈り続けることが大切」と訴えました。
これを受け、移動傾聴喫茶「カフェ・デ・モンク」を主宰する曹洞宗通大寺の金田諦應住職が感想を述べました。金田師は、被災地で支援活動をする中で、「生と死は誰が決めるんだ」と何度も問われたと述懐。津波で何もかも奪われた海岸に立ったとき、「そこには神も仏もなかった」と声を詰まらせました。それでも祈り、被災者に寄り添い続ける中で、「潮風の中に再生の希望、そして神仏を感じた」と語り、宗教者として被災地という現場に居続けることが、自分にとっての使命であると結びました。
続いて、臨床宗教師の育成に携わる東北、愛知学院、高野山、種智院、上智、鶴見、武蔵野、龍谷の8大学がこれまでの活動を報告。それぞれの大学で行われている講座内容や受講生の学び、また今後の展望などが紹介されました。
なお、シンポジウムの開催と臨床宗教師養成には、庭野平和財団の支援が行われています。