今日のことば
10/17 金曜日
生まれ合わせた者同士
湯川秀樹(ゆかわひでき)博士が国際会議の席上で、「この世に人類の一員として生まれ合わせた」という言葉を英語で表現しようとしたけれども、「生まれ合わせた」という言葉にふさわしい英語がなくて困った、という話をしておられました。
「同じ時代に生きている」という表現では、生まれ合わせたという意味を十分に表わしきれません。宇宙の大いなるいのちから生まれてきた者同士という兄弟愛、人類の長い歴史の中で時を同じうして生きている者同士という意味が込められなくては、「生まれ合わせた」というニュアンスは十分に表現できないわけです。それに加えて、「生まれ合わせた」という言葉には、人間の存在は持ちつ持たれつの関係にある、といった意味合いも含まれているわけで、それが、仏教が説く諸法無我(しょほうむが)の真理にほかなりません。
「生まれ合わせた」という、たったひと言の日本語が、それだけの深い意味を持っているのです。その意味をよく理解してもらうことこそ、私たちの平和の呼びかけであり、それが、この地上から争いをなくす根本の考え方であると私は信じているのです。
庭野日敬著『開祖随感』第2巻 68~69頁より