今日のことば

5/17 日曜日

目の前の一人

満員の観客の涙を絞らせる名優に、その秘訣を尋ねたら、「客席の中の一人に訴えるように演じています」と答えたといいます。劇場いっぱいの大観衆だからと力んだり、反対に、一人なんだから、と手を抜くようでは失格なのです。

「薬草諭品(やくそうゆほん)」で仏さまは、「一人(いちにん)の為(ため)にするが如く衆多(しゅた)も亦然(またしか)なり」と教えられていますが、一人の人を本当に救える法が説ければ、どんな大勢の人でも感動してもらえる説法になっているのです。親鸞上人の教えを世にあまねく広めた蓮如(れんにょ)上人は、仏法を説くのに貴族ぶったり尊大に構えたのでは、人びとに敬遠されてしまうとおっしゃって、とにかく人が喜んで聞いてくれる話から始め、相手が聞く気になったのを見て仏法の話に戻る、という説き方をされたそうです。

どんな形であれ、まず法の縁に触れてもらうことが大事なのです。喜んで教会に足を向けてもらうにはどうしたらいいか、心をくだかなくてはなりません。価値観やニーズが多様化しているからなどと迷わず、一人の人に本当に喜んでもらおうと真剣に打ち込むと、みんなの心の中が見えてきます。

庭野日敬著『開祖随感』第8巻 256~257頁より
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