今日のことば
10/12 土曜日
不利な条件
「提婆達多(だいばだった)が善知識(ぜんちしき)」という言葉があります。提婆達多は、修行のあり方でお釈迦さまと対立し、お命を狙(ねら)うまでになってしまった弟子です。ところが、お釈迦さまは「提婆達多がいたお陰で私は悟りを得ることができたのだ」と語っておられるのです。
私も信仰に打ち込むようになったとき、親類から強い反対を受けました。しかし、その反対があったお陰で信心が強盛(ごうじょう)になり、挫折することなく、この道一筋にあゆみ続けることができたように思うのです。人はしばしば不幸に出遭(あ)ったり、都合の悪いことにぶつかったりします。そこで嘆いたり、人を恨(うら)んだりしがちですが、苦難から逃げずに「これによって自分の足りないところを直してもらえるのだ」「自分が磨かれるのだ」と受け止めるのが「提婆達多が善知識」と拝む修行です。困難に遭ったとき「これこそ善知識」と口に出して言ってみると、心組みがまるで違ってきます。その心が活路を開くのです。
その場では自分だけ不利な条件に置かれているように思えることも、自分を成長させてくれる仏さまのお慈悲だったと分かるときが必ずくるのです。
庭野日敬著『開祖随感』第2巻 94~95頁より