本会の考え

真に豊かな社会をめざして―― 原発を超えて

東日本大震災によって多くの方々が最愛の人を奪われ、住み慣れた故郷を離れ、苦難の生活を余儀なくされています。立正佼成会は、犠牲となられた方々の()(たま)の安らかなることを祈るとともに、被災地の方々をはじめ、その家族や親類の方々に寄り添い、精神的・物質的支援に努めてきました。被災地の方々は懸命に復興への道を歩まれていますが、その悲嘆と苦悩は、言葉では言い尽くせないほど大きなものがあると思います。

とりわけ、東京電力福島第一原子力発電所事故により、福島では多くの方々が生活や家庭の基盤を失いました。事故発生直後の混乱と不安の中で、それまで地域社会で育まれてきた人と人とのつながりは引き裂かれていきました。胎児や子どもへの放射線の影響を心配しているご家族は数えきれません。多くの母親が今も胸を痛めています。また、今回の事故は近隣諸国をはじめ世界の人々に大きな不安をもたらし、未来世代に計り知れない多大な負担を残しました。

原子力は「未来のエネルギー」と言われ、私たち国民もその恩恵を受けてきました。しかし、ひとたび事故が起きれば、甚大な被害をもたらすことを思い知らされました。経済的な豊かさが人間の幸せの源泉であると信じ、原発の負の部分から目を背けて、その依存度を高めてきた責任は私たち一人ひとりにあります。私たちに問われていることは、原子力発電によらない、真に豊かな社会を可能な限り速やかに築きあげていくことです。そのためには、より安全性の高い再生可能エネルギーの開発と活用に叡智を結集しなければなりません。しかし、一番大切なことは、多くの犠牲の上に際限なくエネルギー消費を拡大してきた価値観や生活スタイルを見直すことです。今こそ、過剰な消費を抑えた「少欲知足(足るを知る)」の心を養い、簡素な生活の中に幸せの価値を見いだす最大の機会であると考えます。

世界は今、文明の転換を迫られています。これまでの経済的・物質的な豊かさを求める生き方を続けていては、限られた地球環境を守り、未来世代によりよい社会を残していくことはできないでしょう。また、貧富の格差が広がる今日の経済や社会のあり方は、人類全体にとって決して幸せなものではありません。私たちの生き方のものさしを「共生」や「自然との調和」、すべての人が安心して暮らせる公正な「分かち合いの経済」などの実現に変えていかなければなりません。

立正佼成会は、すべてのいのちを尊び、慈しみ、自然と人間との共生に基づく心豊かな平和な社会の実現に向け努力してまいります。これこそが今、仏教徒として私たちの果たすべき菩薩行と信じるものであります。
 

平成24年6月18日
立正佼成会

本会の考え一覧へ
よくあるご質問
立正佼成会に関する「わからない」に
お答えします。
よくあるご質問
立正佼成会ってどんなところ?
家の近くに教会はある?
会員になると何をするの?
このページについて
ご意見をお聞かせください。
役に立った
どちらでもない
役に立たなかった