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2001年05月25日 WCRP日本委員会が、米国の「京都議定書」離脱に撤回求める

立正佼成会が加盟するWCRP(世界宗教者平和会議)日本委員会(理事長=白柳誠一カトリック枢機卿)はこのほど、杉谷義純事務総長名で「『京都議定書』の早期批准と米国の議定書からの脱退撤回を求めるアピール」を発表し、在日各国大使館、各マスコミなどに送りました。

地球温暖化防止のための「京都議定書」は、1997年、京都での第3回「気候変動枠組み条約締約国会議」(COP3)で採択されました。先進国のCO2(二酸化炭素)など温室効果ガスの排出量を、2008年から2012年までの間に、5%以上削減(1990年比)することが義務づけられています。目標数値はEU(欧州連合)が8%、米国は7%、日本は6%となっています。
7月にドイツ・ボンで開かれる条約発効に向けた「COP6再開会合」を前に、各国の批准への動きが進められる中、米国政府は4月末、「アメリカ経済の国益に反する」との理由から同議定書からの離脱を表明しました。これに対し、各国からブッシュ政権への批判が相次ぎ、日本の国会でも同議定書の発効と米国の脱退撤回を求める決議が行われました。
WCRPは、国連経済社会理事会の最高協議資格を有するNGO(非政府機関)として世界の平和にかかわる問題に取り組んできました。環境問題にも大きな関心を示し、COPなどの会議にも積極的に参加、「京都議定書」を地球環境の将来に光明を見出すものとして高く評価しています。その意味で、今回、米国政府が同議定書から離脱したことを憂慮。「『京都議定書』の早期批准と米国の議定書からの脱退撤回を求めるアピール」を発表したものです。

「アピール」の全文は以下の通りです。

世界宗教者平和会議(WCRP:WorldConferenceonReligionandPeace)は宗教間対話を通じて世界平和に貢献すべく1970年に設立された団体です。そして、国連社会経済理事会の最高協議資格をもつNGOとして平和、軍縮、人権、難民、環境問題に取り組んで参りました。
WCRPは現在、世界の多くの人々と共に地球環境に危機的な状況が迫りつつあることを認識し、又憂慮しております。さらに、かけがえのない地球を守るために、これ以上に地球規模にわたる環境破壊を許すべきではないと考え、地球温暖化防止会議にも積極的に参加して来ました。その中でCOP3で採択された京都議定書は地球環境の将来に光明を見出すものとして高く評価し、合意に至るまでの関係各国の努力に対し深い敬意を表したのであります。
ところが、この度京都議定書の締結に指導的役割を果たしたといわれる米国が、それを批准するどころか、一方的に離脱を表明したことはまさに青天の霹靂であります。もしここで我々人類が環境問題に対して一歩後退し消極的態度をとるならば自然界の調和を不可逆的にまで破壊してしまう可能性があることを銘記しなければなりません。
又、米国政府は民主主義国家の旗手として日頃、世界の平和と人権に対し指導的役割を果たしてきたと自負しておりますが、この度の暴挙は大変利己的であり、米国への信頼が著しく傷ついたといわねばなりません。我々宗教者は世界の多くの良心的な人々と共に地球の将来のため、そして米国の名誉のため、米国が京都議定書に直ちに復帰することを強く望むものであります。それと同時に関係国が京都議定書の発効に向かって忍耐強い努力を更に続けていくことを要望するものであります。
地球は現在生きている者のためだけにあるのではありません。遠い将来この地球上に生を受けるであろう我々の子孫にとっても住み心地の良いかけがえのない地球であらねばなりません。又そうすることが現在地球上に生存している我々の責務であることを改めて訴え、京都議定書の批准が一日でも早く遂行されることを重ねて要望いたします。

世界宗教者平和会議日本委員会
事務総長 杉谷義純

(2001.05.25 記載)