News Archive

2002年08月03日 京都で「比叡山宗教サミット」15周年を記念し集会

比叡山宗教サミット15周年記念「平和への祈りとイスラムとの対話集会」(主催・同実行委員会)が8月3、4の両日、京都市左京区の国立京都国際会館、宝ヶ池プリンスホテル、比叡山延暦寺を会場に開催され、世界10カ国からイスラム、ユダヤ教、キリスト教、神道、仏教など約1300人の宗教者が参加しました。本会から庭野日鑛会長、山野井克典理事長(同実行委員会副委員長)らが出席しました。集会では、各宗教者による対話が重ねられ、平和に向けた宗教者の役割が模索されました。2日目には比叡山上で「平和の祈り」が捧げられ、「比叡山メッセージ」が発表されました。

《15周年》
1986(昭和61)年、ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世の呼びかけにより、イタリアのアッシジで「平和祈願の日」が開催されました。その精神を引き継ぎ、翌年、故・山田惠諦師(第二五三世天台座主)の呼びかけで、日本宗教連盟傘下5団体を中心に構成される「日本宗教代表者会議」を主催団体に「比叡山宗教サミット」が開催されました。庭野開祖も同会議の名誉顧問としてサミットの成功に貢献しました。
その後、同サミットは毎年継続され、平成9年には10周年を記念し、国内外から多数の宗教者を集めて「世界宗教者平和の祈りの集い」が開催されました。
今回、昨年の米国同時多発テロ事件以来関心が高まるイスラムへの正しい認識を深めるため、特に「イスラムとの対話」がテーマに掲げられました。
《開会式》
3日、国立京都国際会館で国内外の宗教者約1300人が参集して行われました。
主催者を代表して西郊良光・同実行委員会委員長(天台宗宗務総長)があいさつしたあと、海外から参加した宗教代表者が壇上で紹介されました。河合隼雄・文化庁長官、新田邦夫・日本宗教連盟理事長(工藤伊豆・同連盟名誉顧問=神社本庁総長=代読)の祝辞に続き、小泉純一郎首相、ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世、イスラム学の総本山といわれるエジプト国立アズハル大学のムハンマド・サイド・タンターウィー総長のメッセージが紹介されました。
続いて、イマーム・ムハンマド・ビン・サウード・イスラーム大学学長のムハンマド・サアド・アッサーリム博士(サウジアラビア)が『イスラムと平和』をテーマに記念講演し、「イスラムは本来、平和と友愛を説く宗教であり、他宗教を理解するため宗教間の対話も推奨しています」と述べました。
《シンポジウム》
開会式後、同会場で『イスラムとの対話と理解』をテーマに開催されました。吉澤健吉・京都新聞編集局文化報道部情報担当部長をコーディネーターに、アズハル大学神学部副学部長のムハンマド・アブドルファディール・アブドルアジーズ博士、ミル・ナワズ・カーン・マルワット・ACRP(アジア宗教者平和会議)実務議長、ムーサ・ゼイド・ケイラニ・国際イスラム評議会代表が発言しました。3師は、平等主義、生命尊重、慈悲の実践、他宗教への寛容性といったイスラムの教えの特徴を説明したあと、イスラムはテロや暴力を明確に否定しており、イスラムの正しい理解のため、他宗教との橋渡し役として日本の宗教者に大いに期待していると強調しました。
開会式、シンポジウムには近畿教区の会員約300人が参加。京都教会の会員約50人が受付や誘導、接待などのボランティアにあたりました。
《フォーラム》
4日、宝ヶ池プリンスホテルで、宗教代表者270人が参加して行われました。テーマは『紛争和解と宗教』です。杉谷義純・WCRP(世界宗教者平和会議)日本委員会事務総長をコーディネーターに、イフェト・ムスタフィッチ・宗教間対話協議会事務局長、アブドッラー・マブルーク・アッナッガール・アズハル大学イスラム法学部教授、アルバート・フリードランダー・元WCRP国際名誉会長、マイケル・イプグレイブ・英国国教会宗教間協議会顧問、ウイリアム・ベンドレイ・WCRP国際委員会事務総長が、旧ユーゴ紛争や中東紛争といった事例を挙げながら、紛争和解に向けた宗教の役割について意見を交わしました。
《平和への祈り式典》
2日午後、比叡山延暦寺根本中堂前広場に宗教者約600人が集い、開催されました。
シンセサイザー奏者の西村直記氏による幻想的な音楽が流れる中、各宗教代表者がそれぞれの宗教衣装を身にまとい、入場しました。渡辺惠進天台座主(同実行委員会名誉顧問)による主催者代表あいさつに続いて、平和の鐘が鳴らされる中、参加者全員が黙とうを捧げました。
このあと、イスラム、ユダヤ教、教派神道、仏教、キリスト教、神社本庁、新宗連(新日本宗教団体連合会)がそれぞれの形式による「平和の祈り」を捧げました。この中で庭野会長は、新宗連副理事長として導師を務め、「真の平和が一日も早く実現するよう、共に『いのちの子』として祈りを捧げたいと思います」と「祈りの言葉」を奏上しました。
最後に、白柳誠一・WCRP日本委員会理事長(同実行委員会名誉顧問)が、平和に向けた「比叡山メッセージ」を発表し、終了しました。

比叡山メッセージ(全文)

2002年8月3日、4日比叡山宗教サミット15周年を記念して、ここ比叡山上に集ったわれわれは、世界平和のため日夜真摯な努力を続ける宗教者はもちろん、平和を願うすべての人々に、心からメッセージを送りたいと思う。われわれは1987年、比叡山宗教サミットを開催した。宗教の垣根を越えて、時間と空間を共有し平和のためにそれぞれの祈りを捧げ話し合ったことは、宗教の奇跡とさえ言われた。それから10年、われわれの願いは拡がり、世界各地で集会が重ねられて、対話はさらに進められ、祈りは深められた。1997年再び比叡山に集ったわれわれは、アッシジから比叡山へと受け継がれた平和の種子が、世界中に蒔かれ着実に芽吹いて、世界平和の実現に向けて新しい確かな流れを形成しつつあることを確認した。
一方では中東をはじめアフガニスタン、インド・パキスタン問題など、地域紛争の火種を抱える国際情勢を常に憂慮し、その緩和のための微力を捧げてきた。そのような状況の中で、昨年9月米国で引き起こされた同時多発テロは、世界中に大きな衝撃をあたえると同時に、これまでの祈りと対話を通じて平和を希求するわれわれの行動に、重く厳しい課題を突きつけたのであった。けれども、われわれはいかなる理由づけがなされようとも、すべてのテロや暴力を否定することを、ここに強く宣言する。
同時にそれらの暴力の背景にあるものを見極め、平和を求める努力をいささかも怠ってはならないことを強調したい。特に今回の同時多発テロの犯人がイスラム教徒とされたことから、イスラムに対する誤解が全世界に広がったことは全く不幸であり、残念なことであった。われわれは、イスラムも、他の宗教と同じく平和を願う宗教であることを知らなければならない。
そこで、われわれは今回のテロによって生じたイスラムに対する誤解を解き、共に平和のために献身するために、イスラムの最高指導者を招き「平和と祈りとイスラムとの対話集会」を開催したのである。われわれは、米国同時多発テロを「宗教戦争」とか「文明の衝突」とする短絡的な定義づけや宣伝に対し、厳しい批判の目を向けなければならない。また、目に見えない敵に対し、恐怖の余り、全く根拠もない新しい敵をつくりあげ、それに暴力をもって対処しようとする愚挙を行ってはならない。なぜならば、無知こそが、誤解を生む温床であり、お互いの正しい理解と力強い連帯こそ、新たな悲劇を繰り返さない最良の道であることを強く訴えるからである。
今回の同時多発テロを通じて不公正と無理解、無関心、そして貧困と抑圧がどれほど人間の心を絶望の淵に追いやり、虚無的な状況に陥れるものであるか、それがどんなに憎悪を増幅させ人間性を蝕むものであるか、われわれは改めて実感させられた。また、テロや戦争によって、数多くの尊い人命が失われ、今なお失われ続けていることに深い悲しみと憤りを覚える。しかしわれわれは決して諦めてはいない。いかなる大義をかざしても、武力に頼る限り、この果てしない憎悪と報復の連鎖を断ち切ることはできないことを訴え続けたい。不公正や相互不信と不寛容が、人と人との間に流れる慈悲や愛、公正さ平等を阻害し、宗教に名を冠した武力衝突が繰り返されるならば、人類に未来はない。そして戦争は宗教が起こすのではなく、人間によって始められることを深く肝に銘じなければならない。
ここにわれわれは、今日まで続けてきた宗教間の対話及び相互理解と尊重が、問題解決の出発点であることを再確認する。そのためにわれわれは比叡山上に三度集い、共に神仏に祈りを捧げ、平和への決意を新たにすると共に、これ以上一人たりとも新しい敵をつくりださないように呼びかけるものである。
人間が本来有する霊性を呼び起こし、われわれの祈りに込められた、人類が共生へと向かう輝かしい未来への願いを、一人でも多くの人々が共有し、神仏の加護のもと、この地上に平和な時が訪れんことを切に願う。

2002年8月4日
比叡山宗教サミット15周年記念
「平和への祈りとイスラムとの対話集会」参加者一同

(2002.08.07記載)