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2003年10月18日 「庭野ピースフォーラム2003」パネルディスカッション 紛争下5地域の宗教者が和平に向けた議論を展開

「庭野ピースフォーラム2003」では、紛争状況下にある朝鮮半島、スリランカ、イスラエル・パレスチナ、英国・北アイルランド、メキシコの5地域に焦点を当て、それぞれパネルディスカッションが行われました。各ディスカッションの要点を紹介します。

【朝鮮半島】朝鮮半島の分断は諸大国の思惑によるものであり、市民の意思とかけ離れている点が強調されました。南北の統一は両国市民の信頼醸成の上に成り立つものという観点から、市民レベルでの交流の積み重ねが不可欠であるとされました。その意味で、近年、交流が始まった両国の宗教者に寄せられる期待は大きく、まず宗教者同士が「ゆるしの心」で互いの過ちを受け入れ、未来に向けて共に生きる道を見いだしていくことが重要であるとの認識で一致しました。

【スリランカ】政府とタミル・イーラム解放のトラとの20年に及ぶ内戦が2年前、一時的に終結し、和平交渉が進められている現状が報告されました。民族的マイノリティー(少数派)を抑圧してきた政府の政策が紛争の最大要因であったとし、各民族の融和を図る多元主義、共存主義の重要性が指摘されました。さらに、和平と復興には国際的支援も欠かせないことが確認されました。宗教者の役割として、和平交渉の調停役と、内戦で心に傷を負った人々に対するケアが挙げられました。

【イスラエル・パレスチナ】ネーブ・シャローム/ワハット・アッサラームのメンバー(ユダヤ教、イスラーム)とエリアス・チャコール師(カトリック)らがパネリストとして参加。イスラエル政府による弾圧、パレスチナ人による自爆攻撃と「報復の連鎖」が続く状況に、悲痛な思いを吐露しました。両者が「領土問題」に固執するのではなく、人種や宗教を超えた「人間の尊厳」「いのち」そのものを見つめ、歩み寄っていく姿勢が不可欠との意見が相次ぎました。

【英国・北アイルランド】「第14回庭野平和賞」を受賞したコリメーラ共同体のメンバーがパネリストとして出席しました。北アイルランドでは長年にわたり、カトリック系住民とプロテスタント系住民の争いが続いてきました。1998年の包括和平合意後、紛争は鎮静化していますが、両者間の敵対意識は今も根深く残っています。相互理解を進めていくため、次代を担う両派の青年による対話を一層、推し進めていくことで意見が一致しました。

【メキシコ】同国南東部・チアパス州で先住民の人権擁護活動に携わるカトリック神父、平和活動家がパネリストを務めました。15世紀、欧州列強による「新大陸発見」以来、先住民への差別、抑圧が続き、彼らは貧困状態を強いられてきました。カトリック教会もそれを助長してきた面がありました。現在続けられている先住民と共に彼らの尊厳を守る活動が報告され、「貧しい人の中にこそ神が存在する」との神学的理解を広めていく必要性が強調されました。

(2003.10.24記載)