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2003年12月12日 立正佼成会が「自衛隊イラク派遣に対する意見書」を公表

政府が12月9日に自衛隊イラク派遣の基本計画を閣議決定する可能性が大きくなったことを受け、立正佼成会は8日、松原通雄外務部長名の「自衛隊イラク派遣に対する意見書」をまとめ、本会推薦議員の閣僚に送付しました。意見書は9日、衆参両議院の本会推薦議員にも送られました。

本会は今年、有事関連三法成立およびイラク戦争開戦に対して、平和といのちを尊ぶ宗教者の立場から、政府内で熟慮を重ねるよう再三要請しました。今回の自衛隊イラク派遣でも同様の危惧を抱いています。
意見書では、現地でのテロの危険性、攻撃の標的となる可能性に言及した上で、自衛隊派遣候補地のイラク南東部・サマワの安全性に懸念を示しました。
また、先ごろ殺害された2人の日本人外交官に哀悼の誠を捧げる一方、自衛隊の派遣が非戦闘地域での戦闘を招き、かえって治安を悪化させる危険性を指摘。国民への説明も不足しており、「和」の世界の実現のため、多面的で深い議論が求められているとしました。
その上で、イラクへの自衛隊派遣を慎重に考え、対処することは決してテロに屈したことにはならないと主張。現地の状況を見極め、大局的な視点に立ち、日本が本当の意味で国際貢献を果たせるよう熟慮することを政府に訴えました。

「自衛隊イラク派遣に対する意見書」

現在、政府では自衛隊イラク派遣の基本計画が閣議決定されようとしております。
本会は、今年、有事関連三法成立およびイラク戦争開戦に対して、平和といのちを尊ぶ宗教者の立場から、政府内で熟慮を重ねられるよう、再三呼びかけてまいりました。今回の自衛隊イラク派遣に対しましても、同様の危惧を抱くものであります。

先ごろ、自衛隊の専門調査団は、「陸上自衛隊派遣候補地サマワの治安は安定している」と報告しております。しかし同時に、サマワが位置するイラク南東部については、「襲撃等の可能性は存在する」と指摘しています。
また新聞報道によりますと、派遣先の宿営地は高台に置かれるためテロの危険性は少ないとされているものの、宿営地以外で活動する場合は、テロや攻撃の標的となる可能性を否定できないとのことであります。
以上の点からも、サマワが、「安全の保証される非戦闘地域」であるのか、疑問を抱かざるを得ません。

11月29日には、外務省の奥克彦参事官、井ノ上正盛3等書記官が襲撃、殺害されるという事件が起きております。本会と致しまして、衷心より哀悼の誠を捧げるものであります。
この事件を通して我々は、イラクの治安悪化を改めて思い知らされることになりました。このような状況の中で、自衛隊が派遣されれば、非戦闘地域での新たな戦闘を招くことにつながり、かえって治安を悪化させるという悪循環を生じさせる危険性も否定できません。また、「憲法9条」の枠を越えた戦闘行為が行われかねず、イラク復興のために日本が貢献するという本来の目的は、さらに遠のくことになります。

国民への説明不足も指摘されております。自衛隊のイラク派遣に対し、国民の多くが疑問を抱き、ある新聞社の調査では、派遣反対・慎重派が8割を超える結果となっております。国会での慎重な審議を通し、国民への説明を十二分に行うことが必要とされているのであります。

イラク戦争そのものに対しても、米国主導の現在のあり方に疑問を投げかける人々が増えております。真に「和」の世界を実現するために、今何をなすべきかについては、より多面的で、深い議論が求められています。

イラクへの自衛隊派遣を冷静かつ慎重に考え、対処することは、決してテロに屈したことにはなりません。政府には現地の状況をよく見極め、大局的な視点に立ち、日本が本当の意味で国際貢献を果たすことができるよう、熟慮されることを切に望むものであります。

合掌

(2003.12.12記載)