News Archive

2004年01月23日 パレスチナ・ガザ地区のアトファルナろう学校校長、ジェリー・シャワさんに聞く

パレスチナ・ガザ地区のアトファルナろう学校校長、ジェリー・シャワさんが先ごろ来日し、立正佼成会を訪れました。同学校は、「ゆめポッケ」の配布先の一つであり、立正佼成会一食平和基金も支援を続けています。昨年4月、米国などの仲介で新中東和平案「ロードマップ」が提示されたのちも、イスラエル、パレスチナの関係は修復に向かわず、衝突は依然として続いています。シャワ校長に、現地の状況や子どもたちの様子について聞きました。

――ガザ地区の現在の様子を教えてください

ガザは縦40キロ、横10キロほどの面積しかありません。にもかかわらず、約40パーセントの部分はイスラエルに支配されています。残りの土地に130万人のパレスチナ人が住んでいます。イスラエルの占領下、パレスチナの人たちは生活物資や働く場所をイスラエルに依存せざるを得ない状況にあります。失業率は70パーセントを超え、人々は非常に厳しい生活を強いられています。
ガザでは連日、イスラエル軍による空爆や銃撃が繰り返され、また、パレスチナ人が自爆テロを起こすなど戦時に近い状況にあります。家屋や農地も破壊され、たくさんの人が犠牲になっています。
パレスチナの人々は希望が持てず絶望を感じながら生活しているのです。

――子供たちはどのような生活をおくっているのですか

本来、子供は、親や家族に守ってもらえる存在です。しかし、戦争と同じような状況の中では、大人たちも自分の命を守るのに必死です。ガザの子供たちは、誰にも守ってもらえないという恐怖心を抱えながら日々を送っています。飛行機の機影が見えたり、爆音が聞こえると、子供たちはパニック状態に陥ってしまいます。
こうした状況下で、私たちの学校では、絵や工作などの授業を通し、子供たちに、少しでも楽しい思いをしてもらえるよう努めています。しかし、道路の封鎖や外出禁止令などで学校へ来られなくなってしまうこともあります。
もう1つの問題は、子供たちが飢えに直面しているということです。経済的な理由から1日1食という子供も多く、栄養障害が増えています。ガザの半数の子供が貧血や栄養失調の状態だと言われています。

――そうした生活状況に置かれているガザの子供たちに、「ゆめポッケ」はどのような役割を果たしていますか

ガザの子供たちは、"自分だけのもの"を持った経験がありません。ハンカチやおもちゃなど、日本の子供たちにとっては珍しくないものも、初めて手にするものばかりです。「ゆめポッケ」は、子供たちが「自分のことを大事に思い、喜びを与えてくれる人がいる」と感じることができるという意味で、とても大きな役割を果たしています。
子供たちはポッケを開けると、「こんなものが入っている。うれしい!」と喜びの言葉を必ず口にします。そして、「本当にこれ私のなの?」「私がもらっていいの?」と何回も確認してから大事そうに抱え、家に持って帰るのです。
日本では想像できないと思いますが、かわいい絵がデザインされた鉛筆1本でも彼らにとってはとてもうれしいのです。
皆さんが届けてくださる「ゆめポッケ」は、不安と恐怖を抱きながら生活している子供たちに将来への希望、「夢」を与えてくれています。私はそんな「夢」を届けてくださる皆さんにお礼を申し上げたい。そして、喜んでいる子供たちの様子を知って頂きたいと思います。

――パレスチナとイスラエルの和平は可能だとお考えですか

私はもちろん可能だと思っています。
現状では、パレスチナ人とイスラエル人が愛し合うことは困難かもしれません。しかし、双方は歴史から見て人種的、習慣的にも非常に似ているし、かつては一緒に住んでいたわけですから、共生していくことは可能だと思います。それは、イスラエルによるパレスチナの「占領」「支配」という形では、実現しないと思います。国際社会の協力により、双方が対等に共存できるシステムをつくることが大事だと思います。
もう殺戮も破壊もたくさんです。イスラエルの人も同じ思いではないでしょうか。そう思う人が一人でも多く増え、和平に向けて動き出すことを願っています。

――佼成会の会員にメッセージを

「ゆめポッケ」や「一食を捧げる運動」を通し、会員の皆さんが国や文化、宗教などの違いを超え、私たちに寄せてくださっている善意、平和を希求する思いは、私たちの大きな支えです。皆さん方の活動は、世界の子供たちに希望を与えてくださっているのです。今後とも、どうかパレスチナの子供たちのことを忘れず、支援を続けて頂きたいと思います。

(2004.01.23記載)