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2005年04月20日 超党派の国会議員でつくる「臓器移植法改正を考える第9回勉強会」で本会の見解発表

『宗教界から見た脳死・臓器移植』をテーマに超党派の国会議員でつくる「臓器移植法改正を考える第9回勉強会」が4月20日、衆議院第一議員会館で行われ、席上、中央学術研究所の今井克昌所長が本会の見解を発表しました。「脳死を一律に人の死」とする自民党改正案の国会提出が見込まれる中、当日は国会議員はじめ宗教者、市民ら130人が参加。本会はじめ曹洞宗、大本、新宗連(新日本宗教団体連合会)の各代表者が見解を表明したほか、天台宗、天理教、真宗大谷派、浄土宗の見解が紹介され、すべての団体が改正案に否定的であることが示されました。

臓器移植法は国民的議論の末、「移植の場合に限り脳死を人の死と認め、本人の提供意思の表示と遺族の同意を条件に臓器移植を行う」ことを基本理念として1997年に成立しました。法施行から7年余が経過し、自民党は「脳死を一律に人の死」とすると共に、「本人の意思表示なしでも遺族の承諾だけで臓器提供できる」との改正案を国会に提出する意向を示しています。
勉強会では、『バチカンでの国際会議報告』と題して渡部良夫・藤田保健衛生大学名誉教授が、『宗教学の視点から』をテーマに島薗進・東京大学教授がそれぞれ講演しました。
今年2月にバチカンで行われたローマ教皇庁科学アカデミー主催の脳死問題の国際会議にアジア代表として出席した渡部氏は、脳死状態を個体死とする医学的根拠が最近の研究によって揺らいでいる事態を指摘。臓器移植を進めてきた英国などで倫理的理由から脳死・臓器移植に反対、慎重な意見が増加傾向にあると報告しました。
続いて島薗氏は、改正案に対して広く宗教界から懸念が表明されている現状に触れ、日本には「脳死を人の死」と認めることのできない文化風土があると強調。併せて、日本が脳死・臓器移植について世界でもっとも熱心な議論をした国であり、欧米で日本の議論に学ぼうとする動きが生命倫理の研究者を中心に広がっていることを紹介しました。その上で、改正案に対して「従来の熱心な議論を簡単にひっくり返す姿勢に疑問を感じざるを得ない」と述べました。
このあと、曹洞宗、立正佼成会、大本、新宗連の4団体が見解を発表しました。
今井同研究所所長はこの中で、去る3月11日に本会が山野井克典理事長名で発表した「臓器移植法改正案に対する提言」に言及。改正案の問題点を指摘した上で、現行法の基本理念である「脳死を一律に人の死としない」「本人の意思尊重」を重視するよう求めました。また、新宗連の斎藤謙次事務局長は3月22日に発表した庭野日鑛理事長名による「『臓器移植法』改正に対する声明」に触れ、脳死を人の死とする国民的合意が得られていない中で拙速な改定を行わないよう訴えました。

(2005.05.06記載)