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2006年06月23日 レバノン・ベイルートで「WCRP中東青年事前会議」

「WCRP(世界宗教者平和会議)青年世界大会」に向けた「WCRP中東青年事前会議」(主催・WCRP国際委員会)が6月23日から25日まで、レバノン・ベイルートで開催されました。会議には、北アフリカを含む中東地域6カ国から36人のムスリムやキリスト教徒の青年が参加。中東地域が抱える暴力の現状、そのメカニズムなどについて討議を行い、宗教青年の役割、連帯の重要性を確認しました。日本からは松本貢一・WCRP国際青年委員会(IYC)副委員長(本会青年本部長)をはじめ「WCRP受入ボランティア」の青年ら21人がオブザーバーとして参加しました。

8月、京都でWCRPVIII(第8回世界宗教者平和会議)が開催されるのに先立ち、広島と京都で、初の「WCRP青年世界大会」が行われます。「中東青年事前会議」は、その事前の取り組みとして位置付けられたもの。事前会議はこれまで、アジア、北米、南米、日本、アフリカ、中央・東欧州でも実施されました。今月中旬には西欧地域、イスラエルでの開催も予定されています。
今回、会議が行われた中東は、半世紀以上にも及ぶイスラエル・パレスチナ問題や、イラク問題などを抱えており、常に緊張状態が続いています。一部の宗教的過激主義、狂信主義によるテロリズムや、専制的な支配者や占領者などに対する抵抗運動として、特に若い世代による「暴力」が顕在化している地域でもあります。
IYCでは、こうした理由から同地域での事前会議を非常に重要なものとして位置付け、開催に向けて準備を進めてきました。また「青年世界大会」の受け入れを務める同日本委員会青年部会もその重要性を踏まえ、中東地域の青年の平和への取り組みをサポートすることなどを目的に、「WCRP受入ボランティア」の登録者の中からオブザーバーとして解脱会、松緑神道大和山、本会の3教団から21人の青年を派遣しました。
ベイルートでの会議は、WCRP国際委員会と共に、世界各国にネットワークを持つ世界学生キリスト教連盟(WSCF)が受け入れにあたりました。WSCF中東事務局長のエリアス・ハラビ師は「会議を機にWCRPとパートナーシップが築けたことは非常に意味がある。今後、WCRPの進めるプロジェクトなどに対し、世界中の私たちの仲間が大きな貢献をできると確信している」と協働に意欲を見せました。
3日間にわたる会議では、日本の青年も参加し、全体討議やグループ討議が行われました。杉野恭一・WCRP国際委員会事務総長補がWCRPの理念や取り組みなどを解説。松本副委員長がスピーチに立ち、宗教青年の協働を呼びかけました。
参加者たちは、中東地域における暴力の形態、その要因や背景などを話し合い、平和構築に向けた青年間の連帯、協働の重要性を確認。「声明文」を採択しました。また、他地域から寄せられる「中東は暴力的である」という一方的なイメージに対して苦悩やフラストレーションを募らせている胸のうちを語り合った上で、その払拭のために一人ひとりが各自の信仰に基づき、真摯に生きていく大切さを確認しました。

■松本貢一・WCRP国際青年委員会副委員長(立正佼成会青年本部長) スピーチ(要旨)

今回、この歴史的な会議に参加でき、中東の青年宗教指導者の皆さまとお会いできましたことをとても光栄に思います。
WCRP国際青年委員会では、8月に日本の広島で開かれる「青年世界大会」に向け、アジア、北米、南米、アフリカ、東欧の各地で「事前会議」を開催し、青年宗教者の協働を呼びかけてきました。なぜこのような取り組みを行っているかというと、宗教の違いを超えた青年によるネットワークの構築が、必ず世界を平和に導くものであると確信しているからです。
20世紀は「戦争の世紀」とも言われました。しかし、人類の奇跡といわれる世界レベルの宗教協力――WCRPが誕生したことも事実です。では、21世紀をいかなる「世紀」にするのか。私たちは世界に横たわる民族、宗教の相違等を原因とする諸問題を、宗教の深い智慧によって根本的な解決へと導く「人類の叡智の世紀」にしなければならないと考えています。そして、まさにその先頭に立ち、未来を、現在を善導していくのが、私たち宗教を持った青年の役割であると思うのです。
過去や歴史は変えられません。しかし、未来は変えられます。そのために、まず出会い、会話をしたいと思っています。会話は相互理解を深め、信頼関係、友情を育むことにつながると私は考えます。青年宗教者同士の友情は、30年後には国の指導者、宗教の聖職者同士の友情に発展するでしょう。この宗教者のネットワークが世界中に広がり、それぞれが愛や慈悲の心を持って行動したならば、世界は平和で安全なものになるに違いありません。
未来をつくるのは私たち青年の行動です。皆さん、ぜひ一緒に行動しましょう。ぜひそれぞれの置かれた場で、それぞれのできる努力をし、共に平和をつくってまいりましょう。
8月に皆さんと広島で再会できますことを楽しみにしております。本日はどうもありがとうございました。ショクラン(ありがとう)。

イラクからのメッセージ

会議には、イラクからも青年宗教者ら4人が参加した。バスを乗り継ぎ、ベイルートに入るまでに2日間を要したという。メンバーの一人で、医師のアマールさん(30)にイラクの現状、日本人へのメッセージなどを聞いた。

現在、多くの国がイラクを支援してくれているが、そのほとんどが将来の見返りを求めてのことだ。日本は常に平和に向かって努力している国。日本が純粋にイラク国民の幸せを願い、手を差し伸べてくれていることに、私たちイラク人は本当に感謝している。
現状を言えば、新政権が誕生したといっても、米国のコントロール下にある以上、私たちにとっての「平和」がすぐに訪れるとは思わない。またサダム・フセイン元大統領の勢力が、盛り返している一面も懸念される。北部、南部は比較的平穏だが、残念ながらバグダッドやその周辺ではテロや人々の衝突が続いている。
日本人に理解してほしいのは私たちイラク人、またムスリムが決して暴力的ではないということだ。私たちは人が殺されたり、建物が破壊されるたびに憤りを覚えている。イスラームの聖典「コーラン」では、決してそうした暴力を肯定していない。
ほとんどのメディアは、イラクについて悪いニュースしか報じていないだろう。だからこそ日本人には、イラクの中で建設的な取り組みがあることを知ってほしい。サダム・フセインは経済を崩壊させ、教育水準を著しく低下させた。その結果、今、国内には弱者があふれている。そうした人たちに対し、私たち青年が自発的に食糧援助や教育支援などを行っている。政府の指示でもなく、組織があるわけでもない。できる者ができることをするという、青年の主体的な取り組みだ。
こうした活動に対し、妨害や脅迫があるのも事実だ。だが、私たちは 諦 めない。時間はかかると思うが、自分たちの国を自分たちの手で平和にするためには、地道な取り組みを積み重ねていくしかないと考えている。イラクは必ず平和になる。そしてその日が来たら、イラクで起きた悲劇が二度と他の国や地域で繰り返されないよう、日本と一緒に多くの貢献をしたいと思っている。

(2006.07.07記載)