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2006年08月21日 WCRP青年世界大会

「我々は希望の道を選ぶ。それが前進するための唯一の手段であるからだ」――第8回WCRP(世界宗教者平和会議)世界大会に先立ち、8月21日から5日間にわたって広島、京都を会場に開催された初の「WCRP青年世界大会」は、世界の平和実現に取り組む青年宗教者の勇気と協働を表明する『広島宣言』の採択で幕を閉じました。大会には45カ国から201人の正式代表をはじめ、オブザーバーとして160人の日本の青年が参加。『平和のために集う青年宗教者――あらゆる暴力をのり超え、共にすべてのいのちを守るために』を大会テーマに、共に学び、経験を語り合うことを通し、一人ひとりに課せられた未来への責任を自覚しました。WCRPの歴史に新たな1ページを刻んだ、青年たちによる大会の模様を紹介します。

正式代表の多くは、大会の開催に先立って世界各地で行われた「青年事前会議」(地域ごとに全9カ所で実施)に出席し、地域の代表として選出されたメンバーです。『紛争解決』『持続可能な開発』『平和構築』をテーマに行われた全体会議(広島市・広島国際会議場)では、地域や国の抱える紛争や貧困、不平等など諸問題の改善、解決に向けた提案をはじめ、青年宗教者としての自覚に立った具体的な行動が次々と発表されました。
インドネシア・アンボン出身のキリスト教徒の一人は、同地でのムスリムとキリスト教徒による宗教紛争について語り、紛争が終結した現在、ムスリムの友人らと協力し、紛争の被害者支援に携わる中で得た気づきや体験を発表。「紛争という困難な体験は、神が私を人間として向上させようと与えてくれたものだと受け止めています。信仰心を深めることによって、私たちは世界を平和に導けるはず」と述べ、自らの信仰に基づき、真摯に生きる重要性を示しました。
コスタリカからの参加者は、ラテンアメリカ地域を覆う経済格差を極めて深刻な「暴力」と語り、犯罪率の高さや麻薬の蔓延、人身売買などに結びついていることを報告。「格差の広がりや不平等感が人々の結びつきを弱めています。一つのテーブルにつき、信頼を醸成することから始めなければいけない」と述べ、「対話」の重要性を示しながら、世界中から異なる宗教を持つ青年が一堂に会した今大会の意義を強調しました。
イスラエルから参加したユダヤ教徒も自国が抱える問題に触れながら、諸宗教間対話を基盤とした平和構築への期待を述べました。このほか、カンボジアやシエラレオネ出身者が内戦の終結、また復興の過程で宗教者が果たしてきた役割などを報告。米国からの参加者は昨年のハリケーン災害時、さまざまな宗教が率先して被災者の救援にあたったことを紹介し、宗教者として常に他者の救いのために働く大切さを呼びかけました。
全体会議とそれを受けて催されたグループワークで、参加者たちはそれぞれの経験を語り合い、学び合うことを通し、宗教や宗教者、さらに諸宗教の連帯の持つ可能性を一層強く自覚しました。開会式翌日から4日間にわたって行われた討議は日を追うごとに白熱し、時間の延長、プログラムの変更も必要とされたのです。
そうした過程を経て、『広島宣言――希望の道を選び、行動を起こす青年』が採択されました。
宣言文では冒頭、参加者たちが被爆地・広島で得た「最も過酷な状況下でも他者に対して心を開くことを忘れてはならない」というメッセージが示されました。さらに、さまざまな困難に立ち向かう仲間の声から触発されたことに言及し、『あらゆる暴力をのり超え、共にすべてのいのちを守るために』という大会テーマの具現に向け、青年宗教者による世界的なネットワークの構築に尽力することを表明しました。
紛争や貧困、環境破壊、社会的不公正、疾病の蔓延など、現在、世界各地を覆っている人々のいのちの尊厳を脅かすさまざまな「暴力」を懸念し、「危機に直面している世界各地で、我々は今後とも数多くの任を果たす必要がある」と宣言。その上で、地域ごとに行動を志向した宗教ネットワークを構築し、強化することや、各地域および世界規模で紛争の転換と平和の構築、持続可能な開発を促進するための具体的行動の実践、メディアに対して公正な宗教報道を求めることなどを「目標」として掲げました。また、WCRPのプログラムへの参画、さらにWCRPと同様の目標を持つ非政府機関などとの連携も表明しました。
25日、京都市の国立京都国際会館で開催された閉会式は、エル・ハッサン・ビン・タラールWCRP国際委員会実務議長(ヨルダン王子)、アン・ヴェネマン国連ユニセフ事務局長、ウィリアム・ベンドレイWCRP国際委事務総長、杉野恭一・同事務総長補らも出席しました。
ジアド・ムーサWCRP国際青年委員会(IYC)委員長がハッサン議長に『広島宣言』を提出。ハッサン議長は、「人間の尊厳が失われている今の状態の架け橋となる」と語り、平和実現に向けて前進する青年たちの強固な意志を讃えるとともに、未来に向けた具体的な取り組みに期待を寄せました。
最後に松本貢一・IYC副委員長(本会青年本部長)が閉会のあいさつに立ちました。松本副委員長は、世界9カ所で行われた「事前会議」と今大会の成果を総括し、青年の実行力、平和創出に向けた可能性を強調。「青年宗教者による真摯な祈りや真実の声は、社会や世界に大きな変化をもたらすでしょう。過去や歴史は変えられませんが、未来は変えることができます。今日から始まる私たちのチャレンジによって、未来はつくられていくのです」と初の「WCRP青年世界大会」を締めくくりました。

<その他のプログラムから>
海外からの参加者に日本の伝統文化に触れてもらおうと23日夜、広島国際会議場・ヒマワリホールで文化交流が行われました。大会に参加した日本の各教団が伝統芸能などを披露しました。本会からは倉敷教会と浜田教会が出演。倉敷教会青年部は「観音太鼓」を演奏し、勇壮な和太鼓の音色を響かせました。浜田教会青年部は「石見神楽」の囃子に合わせて「恵比寿舞」を披露。ユーモアあふれる踊りに、会場は和やかな空気に包まれました。このほか金光教青年信徒による「典楽」、松緑神道大和山青年会による「よさこいソーラン」「ねぶた」が露されました。
また、同日朝の「諸宗教の祈り」の時間には、参加者が世界平和の祈りを込めて折り鶴を作製しました。海外の青年もボランティアから手ほどきを受けてこれに挑戦。本会の少年部員が「菅沼子ども村」で折った鶴と共に、広島平和記念公園内の「原爆の子の像」に手向けられました。
大会中、市民への公開プログラムも用意され、同日、フェニックスホールでは東京佼成ウインドオーケストラによるチャリティーコンサートが行われました。1617人の市民を前に『翼とともに』『生きる喜び』など全7曲が披露され、聴衆を魅了しました。指揮を務めたダグラス・ボストック氏は、「私たちと青年宗教者が共に平和を願い、被爆地の広島で心を一つにできたことを光栄に思います」と語りました。なお、来場者から寄せられた147万3958円は翌24日、広島市に寄託されました。浄財は、平和推進活動に役立てられます。

(2006.09.01記載)