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2007年02月27日 「第24回庭野平和賞」が台湾の仏教尼僧・證厳法師に

「第24回庭野平和賞」の受賞者が台湾の仏教尼僧で、財団法人「台湾仏教慈済慈善事業基金会」(仏教慈済基金会)の創始者である證厳法師に決定しました。庭野平和財団(庭野日鑛総裁、庭野欽司郎理事長)は2月27日、本会京都教会で記者発表会を開き、席上、庭野理事長が正式に発表しました。同基金会を設立した同法師は仏教の教えを基盤に、慈善活動をはじめ医療、教育文化事業、国際援助といった活動を通じて貧困者の救済に尽力。「すべての人々への奉仕」と「人々の心の変革」を目指す取り組みは、物資や機会の提供だけにとどまらず、触れ合う人々に思いやり、慈悲心を呼び起こしてきました。同法師の信念と指導のもと、同基金会は現在、500万人の支援者を数える仏教ボランティア団体に成長。仏教精神に基づく平和への取り組みが世界各地で続けられています。贈呈式は5月10日、東京・千代田区の日本プレスセンタービルで行われ、庭野総裁から正賞として賞状、副賞として顕彰メダル、賞金2000万円が贈られます。

庭野平和賞は、宗教的精神に基づいて宗教協力を推進し、世界平和の実現に顕著な功績を残した個人・団体に贈られます。世界125カ国、約800人の識者に推薦を依頼し、「庭野平和賞委員会」(各国で宗教協力や平和活動に取り組む11人の宗教者で構成)で厳正な審査を行い、今回の受賞者が決定しました。
證厳法師は1937年に台湾の台中県に生まれました。63年、父親の死に直面し、人生の真実を知りたいと僧侶になることを決意。台北で高僧として名高い印順導師の弟子となり、「生きとし生けるものすべてに真剣に取り組む」よう教えを受けました。また、カトリックシスターとの出会いから、キリスト教が社会慈善事業に積極的に取り組んでいることに関心を持ち、仏教の人道主義に基づく社会貢献に思いを巡らせました。
66年、台湾東部・花蓮市の貧しい人々が多く住む地域にあった普明寺の境内に、仏教慈済基金会の前身である「仏教克難慈済功徳会」を設立。会員となった30人の主婦と共に、貧しい人々を支援するため食料品購入の献金を募ったことが活動の始まりとなりました。同法師の教えと実践によって、多くの人が救われ、そうした人々がさらに貧しい人々の救済にあたったことで会員数は拡大していきました。
会員と共に貧困者の救済にあたる中、病気になっても地域で満足な治療が受けられないことが貧しさの要因の一つであると知った法師は79年、病院建設を考えるようになりました。6年間におよぶ運動、資金調達に奔走する中で、多くの協力者が現れ、84年に病院建設に着手。2年後、台湾で初めて貧しい人が保証金なしで治療の受けられる花蓮慈済総合病院を開業しました。同病院の設立は従来の医療制度を変えたばかりでなく、医師や看護師、ボランティアが一つの"家族"のような関係を築き、「すべての人に慈悲の心」をモットーにして治療にあたったことから大きな注目を集めました。96年には台湾で初めてターミナルケア(終末期医療)を開始。多くのボランティアが患者の悩みや苦しみ、家族の心情のケアに努めてきました。2000年には台湾南部に新たな病院が誕生。さらに現在、北部で新病院の建設が進められています。
この間、同法師の指導のもと、同基金会の取り組みは医療だけでなく、教育、文化事業、国際援助へと活動の幅を広げていきました。
教育については、貧しい人々を支援するとともに、富める人々には浪費を戒め、困っている人々に援助の手を差し伸べるよう説きました。教育機関の充実を図り、89年に慈済看護短期大学(後に慈済技術大学)を、94年には慈済医科単科大学(後に慈済総合医科大学)を設立しました。高水準の医療技術を教えるとともに、医療従事者には患者への尊敬とやさしさが不可欠であるとの考えから、良心をもって医療行為にあたるよう心の教育に力を注いできました。
また図書館や研修室、研究室、ギャラリーや瞑想室を兼ね備えた静思堂をつくり、文化事業を積極的に推進。一方、91年にバングラデシュを襲ったサイクロン被害の救済にあたったのを機に国際援助活動もスタートさせました。これまでモンゴルやエチオピアで発生した干ばつ被災者への援助、エルサルバドルで起きた地震の復興救援など57カ国で活動を展開してきました。アフガニスタンではキリスト教のNGO(非政府機関)と協働で支援活動を行いました。
慈善、医療、教育、文化の4項目を柱とする同基金会の活動は、困窮している人々に援助の手を差し伸べながら、与える側、受ける側の双方に慈悲の心を育むことに重きが置かれてきました。そこには、「他人への愛の欠如が、世界にある多くの問題の原因になっている」「世界を救うには、心の変換から始めなくてはならない」という同法師の信念が貫かれています。
現在、仏教精神を基盤にした同基金会の活動は多くの賛同を集め、500万人の支援者を数える世界最大規模の仏教ボランティア団体に成長。同法師の教えのもと、触れ合う人々の心に愛や慈悲の心を呼び起こしながら、台湾のみならず世界各地で問題解決と社会変革への地道な取り組みが続けられています。

(2007.03.02記載)