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2008年02月27日 「第25回庭野平和賞」にヨルダンのハッサン王子

「第25回庭野平和賞」の受賞者がヨルダンのエル・ハッサン・ビン・タラール王子(60)に決定しました。庭野平和財団(庭野日鑛総裁、庭野欽司郎理事長)は2月27日、本会京都教会で記者発表会を開き、席上、庭野理事長が公式に発表しました。イスラームからの受賞は第5回の「世界イスラム協議会」に続くもので、個人では初めてとなります。ハッサン王子は中東地域をはじめ世界の平和を実現するため、紛争和解、人権、軍縮、環境など多分野で平和活動を展開してきました。「アラブ思想フォーラム」「王立諸宗教研究所」などを創設し、文化交流や宗教協力を推進。1999年から2006年まで、WCRP(世界宗教者平和会議)国際委員会実務議長を務めました。イスラームの教えと信仰に基づく平和への情熱、そのリーダーシップが高く評価され、今回の受賞となりました。贈呈式は5月8日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で行われ、庭野総裁から正賞として賞状、副賞として顕彰メダル、賞金2000万円が贈られます。席上、受賞の記念講演も予定されています。

庭野平和賞は、宗教的精神に基づいて宗教協力を推進し、世界平和の実現に顕著な功績を残した個人・団体に贈られます。世界125カ国、約800人の学識者、宗教者などに推薦を依頼し、「庭野平和賞委員会」(各国で宗教協力や平和活動に取り組む12人の宗教者、識者らで構成=別掲)で厳正な審査を行い、今回の受賞者が決定しました。
ハッサン王子は1947年に首都アンマンで、預言者ムハンマドの子孫にあたるヨルダン王室ハシミテ家に生を受けました。イギリスのオックスフォード大学東洋学部で学士号、修士号を取得。兄である先代のフセイン国王が99年に亡くなるまで政治顧問を務めました。現在のアブドラ二世国王は甥にあたります。
この間、イスラエル・パレスチナの紛争を中心に中東問題にかかわり、正義を伴った平和を主張して、その構築に尽力。「平和とは戦争のない状態ではなく、和解が達成されてこそ実現されるもの」との考えから、民族や宗教、文化などの違いから起こる偏見や憎悪の解消に重要な役割を果たしてきました。あらゆる人間の尊厳を公平に重視するハッサン王子の姿勢は、イスラームの教えと自らの深い信仰が基盤となっています。さらに、他の宗教を尊重することによって、イスラームによって開かれたその世界観は豊かさを増し、対立や分裂が広がる世界に和解をもたらす活動へとつながってきました。国内では70年の「王立科学院」に続き、81年に「アラブ思想フォーラム」を創設。以後、「イスラーム科学アカデミー」「ハシミテ援助・救援局」「アラブ青年フォーラム」などを設立し、学術研究、諸文化間の対話・交流、援助活動などの促進を図りました。
平和への情熱とリーダーシップは国際的な場でも発揮され、81年、国連による「新国際人道秩序」の作成を提唱。その後、これは「国際人道問題独立委員会」(ICIHI)の設立として実を結び、共同議長を要請されました。同委員会による最終報告書は第42回国連総会で採択されました。さらに、2001年の国連主催による「人種偏見、差別、外国人排斥、その他の関連する不寛容に反対する世界会議」では、国連事務総長が任命した地域専門家の一人に選ばれました。
このようにハッサン王子の活動は政治の枠を超え、国際的な紛争和解、人権、軍縮、環境といった人類が直面している地球的諸問題の解決を目指すものです。とりわけ、諸宗教間の対話・協力による平和実現には大きな力を注いできました。
94年、国内に「王立諸宗教研究所」を創設しました。99年にアンマンで行われた第7回WCRP世界大会では、ハッサン王子を中心に王立諸宗教研究所が受け入れを担当。世界69カ国から1000人の諸宗教者が集い、初めてイスラーム圏で開催された大会を成功させました。併せて、大会の席上、WCRP国際委員会実務議長に就任。2006年に京都で開かれた第8回WCRP世界大会まで実務議長として組織を牽引しました。現在は名誉会長の任にあります。
近年は「諸宗教・諸文化の研究および対話推進財団」の総裁就任を受諾。「アブラハムの宗教」と言われるユダヤ教、キリスト教、イスラームの3宗教の違いに敬意を払いながら、共通点に光をあてるという同財団の目的に沿った取り組みを始めています。
このほか、現在、「ローマクラブ」会長、「大量兵器国際委員会」理事、「核脅威イニシアティブ」理事など数多くの国際組織の要職を務めています。また、これまで、『パレスチナの民族自決』『平和を求めて』『アラブ社会のキリスト教』『ムスリムであること』など数多くの著者や論文を発表。さらに、中東の地には、人々の真摯な願いや希望が聞き入れられる市民社会、政府の構造をつくりあげていくことが重要との主張を続けています。特に、イスラエル・パレスチナ紛争が、相互の努力と地域の協力で終結に向かうことへの希望を語るとともに、中東における紛争の根本原因の一つである貧困の解決に向けた議論を強力に進めています。
庭野平和賞委員会は、ハッサン王子の信仰に支えられた平和実現への精力的な取り組みを高く評価。賞賛の意を表し、「その功績を広く世界に知らしめることにより、多くの人々を啓発し、平和に貢献する同志の輩出につながることを切望いたします」と発表しました。

(2008.03.07記載)