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2009年02月20日 「第26回庭野平和賞」発表

「第26回庭野平和賞」の受賞者が、ウガンダの聖公会牧師であるギデオン・バグマ・ビャムギシャ参事司祭(49)に決定しました。庭野平和財団(庭野日鑛総裁、庭野欽司郎理事長)は2月20日、立正佼成会京都普門館で記者発表会を開き、席上、庭野理事長が公式に発表しました。ビャムギシャ師は1991年、HIV(エイズウイルス)感染の事実を知り、翌年に陽性者であることを公表。予防と適切な治療を困難にしている陽性者への差別や人権侵害を明らかにし、病に対する意識の向上やケアの確立に貢献してきました。2002年には「ANERELA+(HIV/エイズと共に生きる、あるいは自らも罹患(りかん)者である宗教指導者のアフリカネットワーク)」を創設。諸宗教者と共に啓発活動や国家レベルの政策立案などに取り組んできました。贈呈式は5月7日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で行われます。

庭野平和賞は宗教的精神に基づいて宗教協力を推進し、世界平和の実現に顕著な功績を残した個人・団体に贈られます。世界125カ国、約700人の学識者、宗教者らに推薦を依頼し、庭野平和賞委員会(各国で宗教協力や平和活動に取り組む12人の宗教者、識者らで構成)で厳正な審査を行い、今回の受賞者が決定しました。
ビャムギシャ師は1959年、ウガンダで生まれました。マケレレ大学教育学部を卒業。高校の教師を経て、神学を学び、ウガンダ聖公会の牧師となりました。91年に妻の死亡により、自身のHIV感染を知ります。社会ではHIVに対する無理解から病気への恐怖や偏見が強かったにもかかわらず、個人的な苦しみを多くの人々に勇気と希望を与える社会的メッセージに転換することを決意。翌年、自らが陽性者であることを公表しました。
HIVの世界規模での流行は病気とともに生きる3300万人だけでなく、家族や地域社会、国家に多大な苦悩をもたらしています。人道上、最も深刻な課題の一つで、国連の安全保障理事会や特別総会で討議され、UNAIDS(国連エイズ合同計画)も新設されました。
陽性者は病苦に加え、人々の不正確な認識によって差別を受け、苦しんできました。従来、「節制」「貞節」「コンドーム」を強調した教育や対策が進められ、一定の成果は認められたものの、不適切なメッセージによって陽性者は「淫(みだら)らな行いをした者」という汚名を着せられ、"失敗者"の烙印(らくいん)を押される事態も起きました。差別を恐れ、検査や治療を受けない人も増加。HIV対策の最大の障壁は「感染を恥辱と考え、沈黙すること」と言われるゆえんでもあります。
問題の深刻さと多重の苦しみを抱える人々を目にした同師は、従来の政策やメッセージの誤りを指摘し、正確な知識の普及、差別や偏見の解消に尽力。各国政府や企業の雇用者などに精力的に働きかけてきました。
安全な営みのためには節制、貞節、コンドームだけでなく、「母子感染予防」「安全な血液や注射」などが不可欠と主張。「治療や栄養摂取の重要性」「名誉を傷つけないカウンセリングや検査の実施」「地域社会のエンパワーメント」「他の感染症の予防と対策」などの推進を提示しました。
99年、01年、06年の国連総会特別総会での演説をはじめ、40カ国以上での講演を通して、すべての人が予防と治療を手に入れることができる公正な世界の実現などを訴えてきました。また、差別や偏見の背景には、不正確な知識に基づく一部の宗教者の言動も少なからず指摘されており、誤ったキリスト教の信仰に立ち向かい、啓発活動に努めました。
01年には活動が評価され、ウガンダ・ナミレンベ教区の聖パウロ大聖堂から高位聖職である「参事司祭」の称号が授与されました。現在はウガンダとザンビアの2聖堂の司祭を務めています。
これまでにHIVに対する教会のリーダー育成と会員のトレーニングを実施する「ケアリー大僧正地域リソースセンター」、エイズ孤児など支援を必要とする子供たちの教育や健康を促進し、指導者を養成する「ギデオン参事司祭支援者財団」を設立しました。02年には諸宗教者と連携して偏見をなくし、各宗教共同体により良い変革をもたらす「ANERELA+」を創設。アフリカ23カ国のすべての宗教から1700人以上がメンバーとなり、国家レベルの啓発運動や政策立案などを推進しました。この組織の活動は、世界2500人の宗教者が参加するINERALA+(HIV/エイズと共に生きる、あるいは自らも罹患者である宗教指導者支援ネットワーク)の誕生につながりました。
このほか、ウガンダ・エイズ委員会で活躍し、HIV/エイズ問題に関するクリスチャンエイド親善大使、アフリカHIV対策シンクタンク理事の要職にもあります。
庭野平和賞委員会は、同師の信仰に基づく知性と勇気、傑出した行動力を高く評価し、庭野平和賞の贈呈を決定しました。
贈呈式は5月7日に東京・有楽町の日本外国特派員協会で行われ、庭野総裁から正賞として賞状、副賞として顕彰メダルと賞金2000万円が贈られます。

「庭野平和賞委員会」委員
▼委員長=グナール・スタルセット師(ノルウェー、キリスト教、ノルウェー国教会名誉主教、前ノーベル平和賞選考委員)▼ドゥドゥ・ディエン氏(セネガル、イスラーム、国連人権委員会特別報告者)▼シェイク・イブラヒム・モグラ師(英国、イスラーム、英国ムスリム審議会副事務総長)▼クリスティーナ・リー師(イタリア、キリスト教、フォコラーレ運動本部諸宗教対話部長)▼庭野日鑛・庭野平和財団総裁▼シャロン・ローゼン氏(イスラエル、ユダヤ教、中東における共生のための調査会上席顧問)▼ヤスミン・スーカ氏(南アフリカ、ヒンドゥー教、南アフリカ人権財団理事長、前南アフリカ正義と和解委員会委員)▼プラマハ・ブーンチャイ・ドゥージェイ師(タイ、仏教、マハチュラロンコーン仏教大学講師、エイズに関する諸宗教ネットワークのタイ支部議長)▼キャサリン・マーシャル氏(米国、キリスト教、世界銀行宗教倫理関係対話推進アドバイザー、同総裁付カウンセラー、ジョージタウン大学客員教授)▼ローザ・オトゥンバイェヴァ氏(キルギス、イスラーム、キルギス国会議員、社会民主党)▼サミュエル・M・ロバート・フエルタ氏(コロンビア、キリスト教、平和運動家)▼呉在植(オージェイシク)博士(韓国、キリスト教、アジア研究所所長)

(2009.2.27記載)