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2009年07月14日 「臓器移植法改正」に対する緊急声明

「臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案」(A案)が7月13日、参議院本会議で可決されました。内容は、「脳死を一律に人の死」とし、本人の提供意思が不明の場合でも、家族の同意のみで年齢に関係なく臓器移植を可能とするものです。これを受け、立正佼成会は同日、渡邊恭位理事長名による「『臓器移植法改正』に対する緊急声明」を発表しました。声明では、1997年に成立した現行法の「基本理念を大きく踏みにじるものであり、改悪以外の何ものでもなく、わが国の将来に重大な禍根を残す」と指摘。いのちの尊厳を擁護する立場から、これまでの提言を、今後も国民各界各層に訴え、「いのちの尊厳が守られる社会の実現に向けて努力していく」と表明しました。

立正佼成会
理事長 渡邊 恭位

「臓器移植法改正」に対する緊急声明

本日、7月13日、参議院において、「臓器移植法改正案」(A案)が可決されました。今回の改正法によって、脳死は一律に人の死とみなされ、本人の臓器提供の意思が不明の場合でも、さらにまた、これまで対象外とされてきた15歳未満の者の場合でも、家族の同意のみで臓器移植が可能となりました。
これは、現行の臓器移植法の基本理念を大きく踏みにじるものであり、改悪以外の何ものでもなく、わが国の将来に重大な禍根を残すものであります。

私たちは、改正法には多くの根本的な問題が残されていると考えます。それだけに、改正については慎重な審議を求めてきました。しかし、衆参両議院における改正の審議はあまりにも拙速に失し、大多数の国民の意思を無視するものであったと言わねばなりません。
改正法は、「臓器不足」の解消を第一義とし、人間の臓器の「産業資源」化を意図するものであり、とりわけ脳死の診断後も成長し続ける「長期脳死児」の生きる権利を脅かすものであって、「いのちの尊厳」にかかわる日本人の伝統的な死生観、倫理観、価値観などに重大な変容をもたらすものと強い危惧の念を抱かざるを得ません。

立正佼成会は、これまでに平成3年12月に「臨時脳死及び臓器移植調査会」永井道雄会長あてに「脳死・臓器移植問題に関する意見書」を提出、同6年6月に「『臓器の移植に関する法律案』に対する見解書」を国会議員およびマスコミ関係者に送り、17年3月には「自由民主党脳死・生命倫理及び臓器移植調査会」佐藤泰三会長および民主党の仙谷由人・政策調査会長に「臓器移植法改正法に対する提言」を提出してきました。さらに、本年4月には衆参両議院の厚生労働委員長および関係議員に対して「臓器移植法改正案に対する重ねての提言」を提出しました。

私たちは宗教者として、すべてのいのちの神聖性を畏敬し、いのちの尊厳を擁護する立場から、これまでの意見書等で提起した提言を、今後とも国民の各界各層に訴え、いのちの尊厳が守られる社会の実現に向けて努力していく所存であります。

以 上

(2009.7.14記載)