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2010年08月07日 「ゆめポッケ親子ボランティア隊」フィリピン・リポート

8月7日から13日まで、小・中学生とその親で構成される「ゆめポッケ親子ボランティア隊」(全39人)が、フィリピンを訪問しました。一行が向かったのは、7千以上もの島々からなる同国で、首都マニラのあるルソン島に次いで2番目に大きい島、ミンダナオ島。手付かずの大自然が多く残る島では現在、紛争や対立、またその他の複雑な問題などで多くの子供たちが傷ついています。「まず、友達になってください」。受け入れ団体である現地NGO(非政府機関)、MCL(ミンダナオ子ども図書館)代表の松居友氏の言葉を胸に、隊員たちは多くの子供たちと出会い、共に歌い、遊び、心を通わせました。

様々な暴力に翻弄される島

現地では1960年代以降、フィリピン政府と先住のムスリム系住民の間で土地の自治権をめぐる武力闘争が続いている。これまでに多くの国内避難民が生まれており、現在も緊張状態にある。また、国内の企業家や多国籍企業が大規模なバナナやパイナップル栽培を目的に強引な土地の買い占めを実施。それまで質素な暮らしをしていた先住民たちは生活の場や糧を奪われ、ますます貧しい生活を強いられている。さらに、70年代に入り石油や天然ガスなど豊富な地下資源が発見されてからは、それらを手に入れたい国内外の権力者たちが以前からの自治権争いにも介入し、問題は一層複雑化している。
そうしたミンダナオ島を訪れた隊員たちを、MCLの子供たち約100人が人懐こい笑顔で出迎えた。MCLは、紛争をはじめとしたさまざまな問題の影響を受けた子供たちのもとを訪れ、絵本の読み聞かせを通じた心のケア、医療や就学支援などを行っている団体だ。キダパワンにある宿舎では、特に厳しい環境に置かれている子供を受け入れ、生活全般を支援。現在は異なる信仰や文化を持つ子供たち90人が、「家族」として共同生活を送っている。
松居氏は、そうした子供たちに「未来を託したい」と語る。ミンダナオ島が政治、経済など国際社会のあらゆる問題の縮図であると前置きし、「みんなが協力し合って生きていく。友達になり、家族になって、お互いに愛し合う。単純なことですよね。大人にいろいろ話すのも一つの方法ですが、私は、ここでの体験を通して子供たちから問題が少しずつ解決していけばいいなと思っています」と話した。

自然に広がる「笑顔の輪」

ビーチで出会った隊員たちとMCLの子供たちはまず、歌やダンスなどお互いの出し物を披露した。その後は、思い思いに交流が始まった。海に飛び込んだり、浜辺で一緒に歌ったり。隊員である親たちも、わが子のようにMCLの子供たちを抱き締めたり、膝(ひざ)に乗せたりしていた。そして、ポッケの配付。日本の親子がそろって、一人ひとりに手渡していった。
翌日から、隊員たちは先住民族の暮らす集落などを訪問し、ポッケを配付した。配付先の一つ、マノボ族などが暮らしているカホサヤン集落。すぐそばには整備された大規模なバナナ農園が広がるが、人々はその恩恵を一切受けておらず、極貧の生活を送っていた。ここは複雑なミンダナオ問題の典型とも言える、緊張度の高い地域だ。2年前に夫を紛争で亡くし、8人の子供と暮らしているというメリー・ジャログさん(40)は、ポッケを受け取った10歳の娘の肩を抱きながら、「ポッケには日本の子供とその親の思いやりが詰まっている。その心が本当にうれしい」と感謝を表した。
その傍らでは隊員たちが明るく、元気よく子供たちと交流を図っていた。英語と時に日本語、そして大きなジェスチャーを交え、ポッケに詰められた文房具やおもちゃなどの使い方を説明し、皆で笑っていた。それは自然な「友達の輪」だった。
12歳の隊員は、「みんなと心と心で会話ができたような気がします。いろいろな難しい現実を知って、これまで続けてきた毎月100円の『ゆめポッケ貯金』と『一食(いちじき)を捧(ささ)げる運動』をこれからもがんばりたいと思いました」と語った。

祈り込めたポッケの力

行程中、ボランティア隊を見守っていた松居氏は、ポッケの持つ力、そしてそこに込められた"思い"の力を讃(たた)えた。
「世界から切り離されたような子供たちが、日本から贈り物をもらう。ポッケを通して、友情を知るという体験が本当に素晴らしいんです。袋の中に入っていたボールペンが書けなくなっても、この、心がつながったという思い出は生涯消えない。それに、編集者をしていた経験から、作り手の魂はそのモノに宿り、人に伝わる、人を揺り動かすと確信しています。だからね、素晴らしいんです、皆さんの思いが込められたポッケは」
一行はポッケの配付活動のほか、マノボ族の聖地・ラナコランを訪れ、MCLの子供たちとともに「平和の祈り」を捧げた。また、ミンタルにある日本人墓地を訪れ、すべての紛争・戦争犠牲者のための慰霊供養を行った。
直接出会って語り合うことで、また、ゆめポッケのように真心を込めた贈り物を通じて、人はさまざまな違いや個性にとらわれず、友達になれる。心が通い合いさえすれば、争いや対立など起きないだろう。また、それらを止めることができるに違いない。「友達になることが、平和につながる」──。隊員たちと共に心に刻んだ。

◆現地WCRP、ユニセフ関係者と交流会

「ゆめポッケ親子ボランティア隊」は11日、ミンダナオ島ダバオ市内のホテルで、WCRP(世界宗教者平和会議)フィリピン委員会、ユニセフ関係者らとの交流会に参加した。

現在、ミンダナオ島では立正佼成会「一食ユニセフ募金」を基に、ユニセフとWCRPが合同で「宗教者による紛争下・後の子ども保護」事業を進めている。同日、その会議がダバオ市内で行われていたことから、日頃ユニセフ支援活動に励む会員たちと現地宗教者や同事業関係者らとの交流会が実現した。
交流会では松本貢一青年本部長、庭野光祥次代会長があいさつに立ったほか、隊員の一人が「一食ユニセフ募金」活動について作文を発表した。

(2010.9.3記載)