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2011年04月14日 【ルポ】東日本大震災 釜石教会 現地報告


会員の引っ越し作業を手伝う盛岡教会のボランティア(10日、釜石市)

東日本大震災により、岩手県大船渡市や陸前高田市などは壊滅的な被害を受けました。同地域を包括する釜石教会では、未曾有の事態の中、会員たちが力を合わせ、支え合って困難を乗り越えようとしています。そんなサンガの姿を追いました。


弘前教会のボランティアが釜石教会に到着。会員に料理を振る舞うためガス釜を降ろす(9日)

生きる 支え合いながら

震災発生直後、大船渡市には大津波が押し寄せ、多くの人命と建造物をのみ込んだ。門之浜湾から約600メートルの場所にある釜石教会大船渡道場も流され、残ったのは建物の基礎部分だけだった。
道場を失った会員たちは、高台にある主任宅を拠点とし、支部長を中心に会員の安否確認を行い、水や食料などの物資を届けた。併せて、手どり用のタオルに書かれた会員のメッセージを見せながら、「一緒に頑張ろう」と励ました。
タオルの一枚一枚には、現地を訪れた庭野日鑛会長の祈りが込められている。陸前高田市内の公民館に家族5人で避難する会員は、タオルを力強く握り締め、涙を流して頭を下げた。
大船渡市立末崎中学校の体育館に避難する会員は、率先して避難者約110人のリーダー的役割を担う。避難者の合意を得て自主的に班を作り、食事当番も設けた。その後、避難者同士の会話が増え、協力し合っていこうという雰囲気が生まれた。「みんな家族です。皆さんに慈悲の心で触れ合いたい」と話す。

今日を機に大きな一歩を

釜石市の死者・行方不明者は合わせて千人を数える。ある支部長も津波で夫を亡くした。夫の死を受け入れられなかったが、庭野会長から「人はどう生きるかが大切です」と言葉をかけられた。お役に精いっぱい取り組み、感謝で生きた夫の人生を思い返し、気持ちを切り替えられた。「主人はとても幸せだったと思います」。支部長は今、多くの会員の悲しみに寄り添う。
市営団地への入居が決まった支部長のために、支部の会員や、奥羽ブロックの盛岡、弘前両教会のボランティアが掃除や引っ越しを手伝った。ボランティアはこのほか、教会道場で温かい料理も振る舞った。総務部長は「サンガの温かさを感じます。まだ先は長いですが、支え合っていきたい」と語る。
4月8日、教会道場に会員約30人が集い、降誕会式典が行われた。前日の余震の影響で道場内は停電したままだ。式典では、2人の支部長が、必死に会員の安否確認にあたった体験などを語った。「生かされたいのちを精いっぱい生きることが、亡くなった方々への一番の供養です」と言葉に力を込めた。
小林克州教会長が会員に語りかけた。「人間は人を愛するためにこの世に生まれてきました。復興に向け、一人ひとりを大事に、支え合って、今日を機に大きな一歩を踏み出していきましょう」。道場は大きな拍手に包まれた。


避難所の人たちと心を一つにする(8日、大船渡市の避難所で)


震災後、再会を喜び合う(8日、釜石教会の降誕会式典で)


会員の安否確認と物資配布のため幹部が車を走らせる(7日、陸前高田市)


庭野会長はじめサンガの思いを受け取り、涙ぐむ会員(7日、陸前高田市)

(2011.04.14記載)