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2011年04月13日 15歳未満の臓器提供の適用に対し緊急声明 大塚厚生労働副大臣に提出

立正佼成会は4月13日、渡邊恭位理事長名による「『15歳未満の脳死臓器移植』に対する声明」(別掲)を発表し、篠崎友伸理事(中央学術研究所所長)が東京・千代田区の厚生労働省を訪れ、大塚耕平厚生労働副大臣に声明文を手渡しました。これは、脳死と判定された10代前半の男子からの臓器摘出が同日、関東甲信越地方の病院で行われ、全国5カ所の病院で患者への移植手術が進められるという一連の動きを背景としたものです。15歳未満の臓器提供は、昨年7月に全面施行された「改正臓器移植法」によるもので、国内初の適用例となります。

平成9年に成立した臓器移植法では人間の死は従来通り、三徴候(心臓の鼓動と呼吸が停止し、瞳孔が開く)によって判断されるものであり、移植の場合にのみ脳死を人の死と認め、本人の提供意思と家族の同意を移植の条件としました。しかし、改正法では「脳死を一律に人の死」とし、本人の提供意思が不明の場合でも、家族の同意のみで移植を可能にしました。また、小児の脳死判定の難しさをめぐって医療界でも意見が分かれたにもかかわらず、脳死判定や臓器提供の年齢制限は撤廃されました。
本会は、これまでも、「いのちの尊厳」を擁護する立場から、「脳死を一律に人の死としない」「提供者本人の意思の尊重」を一貫して主張してきました。
今回の声明では、脳死臓器移植は、一人の人間の死を前提として他人の疾病を治療するという特殊な医療行為であることを挙げ、提供者の人権を守るために自己決定権に配慮しなければならないと強調しました。その上で、今回の臓器提供に触れ、15歳未満における本人の意思確認の手続きや、家族が提供を決断するまでの経緯について透明性が欠落していると指摘。「長期脳死児」や虐待児の「生きる権利」を脅かすものにならないよう、意思確認などのあり方について厳正な法的措置を求めています。

「『15歳未満の脳死臓器移植』に対する声明」全文

4月12日、日本臓器移植ネットワークは、関東甲信越地方に入院していた10代前半の男子が脳死と判定され、家族が臓器提供を承諾し、法的に脳死と判定されたと発表しました。これにより、本日、国内初となる15歳未満の脳死臓器移植が行われました。
脳死臓器移植は、一人の人間の死を前提として他の人の疾病を治療するという特殊な医療行為です。ドナー本人の基本的人権や自己決定権は慎重に配慮されねばなりません。本会は、これまでも「脳死を一律に人の死」とした現行法に対し、強い懸念を表明し、幾度か見解書の形で提言して参りました。
臓器提供に関するドナー本人の意思には、承諾・拒否・判断保留(不明)の3つの選択肢が考えられます。また、人には意思表示しない権利もあります。臓器提供を拒否していない限り、臓器提供を承諾したものとみなすという意思決定の捉え方は、敬虔な日本人の文化伝統とは極めて異質なものであって、日本人の心性に著して親和性を欠くものと言わねばなりません。
特にこの度の15歳未満の者の意思表示に関しては、15歳未満の本人の意思確認の手続、家族が提供を決断するまでの経緯についての情報開示などの透明性がまったく欠落しております。この制度が、脳死の診断後も成長し続ける「長期脳死児」や虐待された小児の生きる権利を脅かすものであってはならず、その意思確認などのあり方について厳正かつ明確な法的措置を講ずる必要があると考えます。
私たちは宗教者として、すべてのいのちの神聖性を畏敬し、いのちの尊厳を擁護する立場から、これまでの意見書等で提起した提言を、今後とも政府を始め国民の各界各層に訴え、いのちの尊厳が守られる社会の実現に向けて努力していく所存であります。

平成23年4月13日

立正佼成会理事長 渡邊恭位

(2011.04.21記載)