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2011年06月03日 被災地・釜石の現状 小林克州教会長に聞く

東日本大震災から2カ月半余りが経過しました。地震、津波により壊滅的な被害を受けた釜石教会。包括する地域では復興への道筋が模索される一方で、今も安否の確認が懸命に続けられています。震災からこれまでの教会の状況や会員の心情、復興への思いなどを小林克州教会長に聞きました。

釜石教会では、7支部のうち三陸海岸沿いを包括する宮古、山田、大槌、釜石第一・第二、大船渡の6支部が地震と津波により大きな被害を受けました。これまで教会を支え、共に修行してきた多くの会員さんが犠牲となり、親戚や友人を失った人も大勢います。家を流された方は、今も避難所や親戚宅に身を寄せている状態です。
大槌、大船渡両支部に至っては法座所が流されてしまい、被害を免れた会員さんのご自宅を臨時拠点とし、支援物資の保管などに協力頂いています。教会道場、宮古道場、山田法座所では震災直後から避難者を受け入れ、現在も約30人の会員さんが生活しています。
こうした状況の中、被害を受けた沿岸部の6支部では、支部長さんをはじめ幹部さんらが、自身も被災者でありながら連日のように避難所や会員宅を回り、安否の確認とともに物資の配布を続けています。また、会員さんの中には、避難先で率先して炊き出しをしたり、自宅に避難してきた親戚のお世話をしたりと、人さまのために尽くされている方が何人もおられます。私たちは日ごろから「まず人さま」と教えて頂いています。いざというときに自分よりも目の前の人を優先する、皆さんのそうした菩薩行を実践する姿に触れ、み仏さま、開祖さま、会長先生のみ教えの尊さ、日ごろの布施行の大切さを改めてかみしめさせて頂きました。
一方、突然の悲劇を受けとめられず、あの日から時間が止まってしまっている会員さんがおられるのも事実です。家族を亡くした方々は、今もその行方を捜しています。漁業関係をはじめ多くの方が生活の糧を奪われ、将来への不安を抱えています。希望も持てないような状況ですが、それでも、サンガの支えの中で心を寄せ合い、悲しみに向き合っておられます。
そうした現実にあって、会長先生と光祥さまのご来訪は、悲しみに暮れる人々の心に小さな光を灯(とも)してくださいました。その光はいつか必ず前を向く勇気となり、生きる希望になると信じています。震災で母親を亡くしたある会員さんは、「信仰を大切にしていた母のためにも、人に喜ばれる生き方をします」と話してくれました。会長先生から頂戴(ちょうだい)した「一歩一歩」というお言葉を胸に、会員さんが自分の歩幅で前進し乗り越えていけるよう、教会長として触れ合いを重ねていきたいと思います。
震災直後から今日まで、奥羽ブロックをはじめ全国の皆さまに物心両面にわたる真心からのご支援を賜りました。被災した会員さんも少しずつ道場に参拝できるようになり、当番修行やご命日式典を行えるようになりました。全国各地から寄せられた食料や生活用品などの支援物資は、盛岡教会に調整役を担って頂きながら被災した会員さんにお届けしています。十分な物資をお寄せ頂きましたことに、この場をお借りして、心より感謝申し上げます。
最近、電車やバスで席を譲り合う光景がよく見られるそうです。一人ひとりの本来有しているやさしさがさまざまな場で発揮されているのだと感じ、心が温かくなります。悲しみの中にあっても、そうした「おかげさま」を見いだせるよう、会員さんと心ひとつに歩んでいきたいと願っております。

(2011.06.03記載)