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2012年05月10日 第29回庭野平和賞贈呈式 先住民女性の人権擁護に尽力 中米グアテマラのロサリーナ・トゥユク・ベラスケス氏に


ロサリーナ氏の功績を讃(たた)え、庭野名誉会長から賞状が贈呈された

公益財団法人・庭野平和財団(庭野日鑛名誉会長、庭野欽司郎理事長)の「第29回庭野平和賞贈呈式」が10日、東京・港区の国際文化会館で行われました。受賞者はグアテマラの人権活動家で、コナビグア(CONAVIGUA=連れあいを奪われた女性たちの会)の共同設立者であるロサリーナ・トゥユク・ベラスケス氏(55)。先住民「マヤ」の女性であるロサリーナ氏は内戦や軍事政権の弾圧で夫を失った女性たちと連帯し、女性や先住民の人権回復と暴力の撤廃に努めてきました。当日は、日宗連(日本宗教連盟)の芳村正徳理事長をはじめ約150人の宗教者、識者らが見守る中、庭野名誉会長から正賞として賞状、副賞として顕彰メダル、賞金2千万円(目録)が贈呈されました。

庭野平和賞受賞記念講演要旨

庭野名誉会長あいさつ要旨


贈呈式には各国の宗教者や識者で構成される庭野平和賞委員会の委員も出席し、受賞を祝した

先住民の宗教伝統の実践者による受賞は初めてで、ロサリーナ氏は1956年にグアテマラのチマルテナンゴ県に生まれました。小学4年生で一時中退しましたが、のちに通信教育で全課程を修了。国立看護学校で准看護師の資格を取得しました。農村女性に識字教育を行うキリスト教の青年活動にも参加しています。
同国は1838年に共和国としてスペインから独立。現在、人口の40%をマヤ系先住民が占めますが、その70%が貧しい状況に置かれてます。1960年から36年間続いた内戦で、死者・行方不明者は20万人以上、国内避難民は150万人、難民は15万人に上ります。 特に80年代初頭は政府の先住民への弾圧がひどく、内戦犠牲者の83%をマヤの人々が占めました。同氏も82年に父、85年に夫を殺害されています。
夫を殺された女性たちが多くいることを知った同氏は、88年に伝統工芸品の製造販売を行う相互扶助グループを組織。同年、コナビグアを結成しました。現在、12県で1万人の女性が活動しています。
同氏はコナビグアを通し、女性や先住民に対する暴力や、経済的、社会的差別を社会に訴え、生命の尊重と人権の回復の活動に取り組んできました。86年、文民大統領の誕生を機に政府とゲリラ間の和平交渉が始まると、コナビグアは他団体と協力して政府に和平の交渉項目を提案。その成果として和平合意に「先住民族のアイデンティティーと権利」が盛り込まれました。現在は犠牲者とその家族への誠実な対応と賠償、虐殺にかかわった人物の法的責任の追及、秘密裏に殺された犠牲者の発掘などを政府に求めています。 一方、同氏はコナビグアでの活動のほか、96年から4年間、国会議員を務めました。04年には国家補償委員会の委員長に任命されています。
贈呈式では、庭野平和賞委員会のキャサリン・マーシャル委員長=世界銀行宗教・倫理に関するシニアアドバイザー=により選考経過が報告されたあと、庭野名誉会長から賞状と顕彰メダル、賞金の目録がロサリーナ氏に手渡されました。
続いて、庭野名誉会長があいさつ。平野博文文部科学大臣(森口泰孝事務次官代読)、グアテマラのバイロン・エスコベド駐日特命全権大使、芳村理事長が祝辞を述べました。このあと、ロサリーナ氏が記念講演を行いました。

(2012.05.18記載)