News Archive

2012年07月13日 被災者に安らぎのひとときを 釜石市社協「お茶っこサロン」に協力


仮設住宅の各戸を一軒一軒訪ね、温かい声かけを行う本会会員ボランティアたち (7日、お茶っこサロン「見守り訪問」の活動)

東日本大震災で被災した人々に心がほっとするひとときを過ごしてほしいと、立正佼成会会員による「こころホット」ボランティアが、釜石市内で3月より実施されています。同活動は、釜石市社会福祉協議会が進める「お茶っこサロン」に協力し、仮設住宅内に設置された談話室で入居者に飲み物や菓子を提供しながら主に話の聞き役となり、心に寄り添っていくもの。本会「こころ ひとつに」プロジェクトの一環として、これまでに19組が実施され、延べ178人の会員が参加(9日現在)しています。活動は年内いっぱい継続することが決まっています。


市内各所に設置されている仮設住宅。一人暮らしの高齢者も少なくない

立正佼成会「こころホット」ボランティア 会員が仮設住宅を訪問

現在、釜石市内には66の仮設住宅団地が設置されていて、合わせて3千戸以上に単身や家族単位で被災した市民が暮らしています。同市社会福祉協議会が進める仮設住宅内の談話室での「お茶っこサロン」は、入居者への心の寄り添いを目的としたもの。新たに形成されたコミュニティーでの入居者同士の交流や、一人暮らしの高齢者の孤立を防ぐことも役割の一つとして期待されています。現在、立正佼成会のほか複数の団体が同サロンの運営に携わっています。
本会「こころ ひとつに」プロジェクトの一環である「こころホット」ボランティアは、本部職員で構成する同プロジェクトメンバーを中心に、3月から活動をスタート。4月からは会員主体で実施し、支教区単位で4人1組のグループをつくり、4泊5日の行程で訪れています。これまで北海道、奥羽、茨城、北関東、新潟、埼玉、千葉支教区の会員が参加しました(9日現在)。
サロンの開催は、毎週金曜日から日曜日の午前10時から午後3時まで。2チームに分かれ、3日間で6カ所の仮設住宅を訪問します。また活動に先立ち、会員たちは市内の被災状況を視察し、犠牲者の冥福を祈るとともに、「傾聴」や出会いを大切にするためのワークなどに取り組みます。
仮設住宅でのサロンの活動は、開催の案内をしながら各戸を訪ねる「見守り訪問」から始まります。会員たちは入居者に明るくあいさつし、体調を気遣うなど、ひとときの触れ合いに心を込めています。
談話室では、訪れた入居者を温かく迎え入れ、飲み物や菓子を提供しながら心の内を打ち明けやすい雰囲気づくりに努めます。震災時からのショックや悲しみ、現在や今後の生活へ不安を抱える人に対しては、じっとその言葉に耳を傾けます。時には、入居者の冗談に皆で笑い合ったり、歌を歌ったりすることもあるといいます。
7日、千葉支教区の会員ら4人が向かったのは、向定内(むかいさだない)仮設住宅(42戸)。現在、毎週土曜日に本会がサロンを実施しています。
午前10時過ぎ、3人の女性が「常連です」と笑顔を見せながら談話室にやってきました。「遠くからご苦労さまです。ありがとうございます」と会員たちにねぎらいの言葉をかけていました。
家を津波で流され、母親と二人で暮らす70代の女性は、「毎週のお茶っこが本当に楽しみ。津波の前は庭の草取りなど毎日やることがありましたが、ここでは何もできない。お茶っこへ来て、気軽に皆さんといろいろな話ができるのが何よりうれしい」と語っていました。同じく津波で家を失い、その後、夫を病で失くしたという一人暮らしの70代の女性は、「私も毎週来ています。普段話し相手がいないので、ここで皆さんに話を聞いてもらうと胸がすーっとして気持ちが休まります」と話しました。
「こころホット」ボランティアは年内いっぱい継続することが決まっており、今後、全国各地の会員が参加する予定です。


談話室に開設される「お茶っこサロン」。会員たちは、入居者に心がほっとするひとときを提供したいと活動を続けている


活動初日、会員たちは仮設住宅へ向かう前に釜石教会を参拝する。


市内に構えた拠点で、会員と「こころホット」プロジェクトメンバーは寝食を共にし、活動に取り組む

◆寄り添い、傾聴重ねて――参加した会員の声

いつかきっと立ち上がれる 青森教会社会福祉専門担当者

ある男性は、津波で仲間を失ったことをとても悲しんでおられました。私は心の中で〈悔しいよね。悲しいよね〉と寄り添いながら、その無念さを一緒にかみしめる思いで、ずっとうなずいていました。
また、私の背中をさすりながら「あなた方も疲れているでしょう」と声をかけてくださる方もいました。
困難な状況の中でも自分のことより人のことを考える皆さんの姿に触れ、いつかきっと立ち上がれる強い心を持っておられる、そう信じています。ただ、人は一人では生きていけません。「お茶っこサロン」のように誰かがそばに寄り添うことがとても大切なのだと改めて気づかせて頂きました。
これからも、朝夕のご供養の中で犠牲になった方々の冥福と被災地の早期復興を祈り続けていきます。

気づいた 人とつながる大切さ 長岡教会支部長

8年前の「7・13水害」や新潟県中越地震などの際には、全国から多くの支援を頂きました。当時の恩返しをさせて頂きたい、その思いからボランティアに誓願しました。
一瞬でも心をほぐすお手伝いができればと、お茶っこでの出会いに臨みました。しかし、ある女性は自ら談話室を訪問してくださったものの、その表情があまり和らぐことはありませんでした。また、外を歩いている女性に声をかけ、「一人でいたい」と言われたこともありました。多くの人が苦しい思いを胸に抱えており、震災による心の傷は人それぞれに違うことを知りました。同時に、そういう方々の支えになるためにも、声をかけ続けなければならないと感じました。
今回、人とつながる大切さに改めて気づかされました。お茶っこの体験を多くの人に伝え、新潟の地から被災地に心を寄せ続けたいと思います。

まず私が全力で取り組んで 小山教会支部長

ある男性との出会いが印象に残っています。50年間働いてためたお金で建てたマンションを津波に流され、残ったのは多額の借金だけだと涙ながらに話されていました。その姿に、同じ一家を支える者として胸のつぶれる思いがしました。
他の方によると、毎週同じ話をされているとのことでした。彼にとって、週に一度、苦しい胸の内を話すこの時間が何よりの救いなのだと思い、傾聴の大切さを実感しました。同時に、苦しみや悲しみを心にしまい込んでいる人がまだたくさんいるのではないかと思い、切なさが込み上げました。
仮設住宅では、花壇や家庭菜園など生活を楽しむ工夫をたくさん発見しました。「前を向いていこう」という皆さんの強い思いを感じ、会長先生の「今を大事に生きる」というお言葉が胸に響きました。まずは私自身が目の前のことに全力で取り組み、被災地に元気を届けていきたいです。

安心できるサロンの意義感じ 大宮教会教会教務員

ボランティアに参加させて頂き、人のそばに寄り添う大切さをとても感じました。
ある60代の男性は震災前は漁師だったことや、今は朝からお酒を飲む日が増えたことなどをポツポツと語ってくださいました。言葉の端々から切ない気持ちが伝わってきて、多くを聞き出そうとしなくてもいいのだと気づきました。
また、今後の生活に対する不安を吐露していた80代の女性が、帰り際に「話して心が楽になった」と言ってくださり、安心できる場所を提供するサロンの意義を感じました。
私にできることは限られていますが、出会った方々をはじめ被災者に思いをはせたり、この学びを周りの人に伝えたりと、忘れない努力をしていきます。機会があれば、ぜひまた参加させて頂きたいです。

(2012.07.13記載)