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2012年11月11日 立正佼成会「憲法改正」に対する「見解書」を発表

立正佼成会は11月11日、『「憲法改正」に対する見解~憲法の「平和主義」を人類の宝に~』を発表しました。この「見解書」は、各政党から示された「憲法改正」草案や大綱の中に、従来の平和主義に基づく国のあり方を大きく変える内容が含まれていることを受け、作成されたものです。憲法に対する本会のこれまでの考えを基に本部担当部署で議論を重ね、理事会の審議を経て決定されました。現憲法の前文と第9条は「単なる理想」ではなく、公正な世界を実現する現実的な手段であり、「人類の宝」にしていくことを訴えています。

本会は1988年に渉外部(当時)によってまとめられた『平和大国への道』を発刊し、憲法に対する教団見解を表明しました。また、「憲法改正」論議が高まりを見せた2005年には、『「憲法改正」に対する基本姿勢』を発表。対立と戦火の絶えない現在の国際社会にこそ、現憲法の理念が必要との姿勢を示しました。
一方、政界では現在、与野党を問わず各政党から現憲法に対する考え方が示され、複数の党からは「改正」の草案や大綱が発表されています。その中には現憲法の前文を改定するとともに、「武力の保持」「国防軍・自衛軍の創設」「集団的自衛権の行使」といった意味合いの文言が明記され、国のあり方を根本から変える内容になっています。
こうした状況を踏まえ、教団では外務部と中央学術研究所が中心となり、憲法に対する本会のこれまでの考えを基に、各党から表明されている「改正案」を検討。さらに、日本や世界の歴史を振り返り、仏教的観点から改めて国や世界の進むべき方向について議論を重ねました。その後、理事会での審議を経て、11月11日に今回の「見解書」が発表されました。
見解書では、第二次世界大戦の悲惨な経験を歴史的教訓として、現憲法が制定された経緯を指摘。この理念のもと、自国の利益にとどまらず、人道的立場から世界全体の幸せを追求することによって国際社会で名誉ある地位を占めたいとしてきた国の姿勢を説明しました。
その上で、仏教的観点から、民族や国家、文化や宗教の違いを認めつつ、すべての人類を「兄弟姉妹」として見つめていくことが世界の平和には不可欠と強調。憲法を改定して、軍事力とその行使権を拡大していくことは、国同士の関係に不信感をもたらし、新たな対立の火種を生む危険性があると懸念を表しました。
さらに、戦争の原因となる偏見や不信の解消、貧困や人権侵害、環境破壊といった問題の解決こそが平和な世界の実現につながるとして、現憲法の前文と9条は「全人類の願いであり、日本の誇り」と表明。公正な世界を築く現実的手段として現憲法の平和主義を世界に広めていくよう訴えました。

「憲法改正」に対する見解~憲法の「平和主義」を人類の宝に~

本会は、平成17年12月1日に『「憲法改正」に対する基本姿勢』を発表しました。ここに改めて、本会の考えを明らかにしたいと思います。

現在、政界を中心に「憲法改正」の論議が高まりを見せています。論議の中には、これまでの平和主義を脅かす内容も見受けられます。憲法の改正は、国のあり方や将来の世代に大きな影響を及ぼすことから、広い視点に立った国民的議論が必要です。

第二次世界大戦では、300万を超える日本人、アジアで2000万、世界全体で5000万にのぼる人々の尊いいのちが失われました。自然・社会環境も破壊されました。この悲惨な経験を歴史的教訓とし、二度と同じ過ちをおかさないとの固い決意により、「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」を基本原則とする日本国憲法が制定されました。

現憲法の前文において、「日本国民は、恒久の平和を念願し、…(中略)…平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意」しました。私たち日本国民は、世界のすべての人々が恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を持っていることを確認し、自国の利益にとどまるのではなく、人道的な立場から世界全体の幸せ、言わば「人類益」「地球益」を追求していくことにより名誉ある地位を占めたいと誓ったのです。

民族や国家、文化や宗教は異なるとも、人類は「地球」という大きな一つの乗り物に乗った兄弟姉妹です。兄弟姉妹が憎しみ、争うことほど愚かなことはありません。武装は相手への不信の表れであり、力に頼れば頼るほど不信感は大きくなります。「万が一の備え」を理由として、軍事力と、その行使権を拡大していくことは、他国との間に緊張関係を招きかねません。私たち日本人には、軍事力に代わる平和の保障をつくりだしていく知恵と行動が求められています。政治、経済、文化など多岐にわたる分野の積極的な国際活動を通して、相互の偏見や不信を取り除くとともに、貧困や人権侵害、環境破壊といった平和を阻害する要因の解決に取り組み、平和の創出に最大限の努力を図っていくことが何よりも必要です。

世界から戦争をなくしていくには、自分の尊さを自覚して、すべてのいのちの尊さに思い至る「内なる平和」を一人ひとりの心の中に築いていかなければなりません。その意味で、本会は、平和主義の象徴である憲法前文や第9条こそ、「全人類の願いであり、日本の誇りである」と考えています。国や民族の違いを超えて互いに出会い、対話し、理解し合い、信頼を醸成しながら、知的及び精神的連帯を強める――こうした共に生きる世界を目指した国づくりを進めることは、人類の進むべき真の方向です。

現憲法の平和主義は、「単なる理想」ではありません。これこそ、戦争を禁止して、すべてのいのちの尊厳を守り、公正な世界を実現する現実的な手段です。本会は、この憲法の平和主義を世界に広め、「人類の宝」にしていかなければならないと信じるものであります。

平成24年11月11日  立正佼成会

『「憲法改正」に対する見解』発表の経緯 外務部長 根本 昌廣

本会は、現憲法を「一文たりとも変更してはならない」という立場は取っていません。改正という行為そのものを否定するものでもありません。そもそも現憲法の第96条には改正規定があり、人権意識の高まり、国民生活や社会の課題に対応するために必要な場合があり得ると考えています。
一方、現在、各党から出されている「改正案」の中には、憲法前文や第9条を改定し、軍事力を拡大するとともに集団的自衛権の行使を認めていく内容が見受けられます。このような改定は、国の根幹である「平和主義」を脅かし、日本のみならずアジアや世界の平和を損なう危険性をはらんでいると懸念しています。教団では、仏教的観点から日本の歴史や世界の現状を見つめ、憲法の「平和主義」について改めて議論を重ねて、今回の見解を発表することになりました。
人類は、大いなる一つのいのちに生かされた「兄弟姉妹」でありながら、長く争いを続けてきました。2回の世界大戦が起きた20世紀は、「戦争の世紀」とまで言われました。争いの大きな原因の一つは、「わが国と他の国」「わが民族と他の民族」というように物事を「自他」に区別し、二項対立的に考える人間の心にあると教えて頂いています。「人類は兄弟姉妹」と考えるか、二項対立的に考えるかでは、世界の「現実」に対する見方、考え方、その後の行動はまったく違ったものになります。平和を築いていくには、対立的な発想を転換していかなければなりません。
「平和憲法」と言われる現憲法前文と第9条は、不殺生や一乗を説く仏教に相通じます。国や民族、宗教や文化の違いを尊重しながら相互の信頼を醸成し、国同士の困難な問題に対しても平和裏に共通基盤を見いだしていこうとする姿勢は、今後の日本と世界の平和にとって不可欠であるはずです。
憲法の改正は、国のあり方や将来の世代に大きな影響を及ぼします。大きな視点に立った国民的議論が必要です。未来世代に対する責任として、私たちには、この問題に主体的、自主的に向き合っていくことが求められます。
会員の皆さまには、今回の「見解書」にじっくり目を通して頂くことをお願いします。また、外務部としてはご要望があれば、教会にうかがい、皆さまと直接語り合う機会を頂ければありがたいと思っております。

(2012.11.16記載)