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2012年11月26日 「アブドッラー国王宗教・文化間対話のための国際センター」開設


就任式では、理事9人が登壇し、宣言書に署名。3国の外務大臣、潘国連事務総長らから期待のメッセージが寄せられた

サウジアラビアのアブドッラー・ビン・アブドルアジーズ国王の構想と主導による「アブドッラー国王宗教・文化間対話のための国際センター」(KAICIID)がオーストリアの首都ウィーンに開設され、同センターの理事に庭野光祥次代会長が就任しました。光祥次代会長は11月26日に現地で開催された開所式と理事就任式に参列。翌27日には理事会に出席しました。根本昌廣外務部長が随行しました。 


理事会では、今後取り組むべき国際的な諸問題などについて、活発に意見が交わされた

同センターの目的は、紛争の回避・解決、社会的結束の発展、相互尊敬と宗教・文化間の理解の促進に貢献すること。サウジアラビアのアブドッラー国王の構想によるもので、サウジアラビア、オーストリア、スペインの3国が創設国家となり、創設オブザーバーとしてバチカンが名を連ねています。恒常的なセンターとして国際的な課題、宗教の諸問題に取り組みます。事務総長はサウジアラビアのファイサル・ビン・アブドゥラーマン氏。
アブドッラー国王はこれまで、イスラーム内での対話やユダヤ教、キリスト教、イスラームの3宗教間の対話、諸宗教対話でイニシアティブを発揮しており、2008年(スペイン・マドリード)と11年(台湾・台北)には「国際諸宗教対話会議」(世界イスラーム連盟主催)を開催。両会議には立正佼成会から庭野日鑛会長が出席し、WCRP(世界宗教者平和会議)の活動などを紹介しながら、諸宗教対話・協力の重要性などを強調しました。台湾の会議で庭野会長は、10年にWCRP日本委員会などが開催した「イスラーム指導者会議」で採択された「平和と共存のためのイスラームのメッセージ」を紹介し、諸宗教間の誤解や偏見を払拭(ふっしょく)する必要性を訴えました。
そのようなWCRPと本会の諸宗教対話・協力への取り組みなどが背景となり、同センター事務局より、東洋の女性仏教者として光祥次代会長に理事への就任が要請されました。理事会は、光祥次代会長はじめイスラーム、ユダヤ教、カトリック、正教会、英国国教会、ヒンドゥー教の指導者ら9人で構成されています。

諸宗教対話の歩み受け継ぎ ホーフブルク宮殿で理事就任式

26日、ウィーン市内のホテルでシンポジウム、ワークショップが開催されたあと、午後、同市内ショッテンリンクにある同センターのビルで開所式が行われ、3国の外務大臣と同センター事務局のメンバー、理事が出席しました。
引き続き、ホーフブルク宮殿で行われた理事就任式には約800人が出席。ウィリアム・ベンドレイWCRP国際委員会事務総長、畠山友利同日本委事務局長も参列しました。ファイサル事務総長の歓迎のあいさつに続き、サウジアラビア、スペインの両国王、オーストリアの大統領のメッセージが紹介されたほか3国の外務大臣、国連の潘基文事務総長らがスピーチを行いました。この中で、オーストリアのフィッシャー大統領は「対話を通して、尊敬、人権、自由、公正に基づいた共生の未来を築くことができると信じる」と期待を寄せました。理事9人が登壇し、宣言書への署名を行いました。
翌27日には、ウィーン市内のホテルで理事会が開催されました。席上、同センターの組織、運営面での課題や今後取り組むべき国際的な諸問題について意見が交わされました。また、光祥次代会長は、同センターのウェブサイト用のインタビュー収録にも臨みました。
理事会後、光祥次代会長は、「開祖さまは、宗教協力そして世界平和のためにご自分の一生を捧げられ、私自身は諸宗教対話を当たり前に感じ、違う宗教の人と家族のようにお付き合いできる環境で育てて頂きました。開祖さま、会長先生から自分の中に受け継いだそのことを皆さまにお伝えさせて頂きたいと思っています。今回、仏教徒として、また唯一の女性として、若い世代として、理事の仲間に入れて頂きました。子供を持つ母親として、女性として、西洋ではなく東洋の視点から発言させて頂くことが、私が皆さんのお役に立てることではないかと考えます。現在起こっている問題の解決だけでなく、将来を見据え、次の世代の子供たちが共に幸せになる価値観を育んでいけるような計画も取り入れて頂ければと思います」と抱負を語りました。

米国ユダヤ人委員会諸宗教間関係国際部長 デビッド・ローゼン師に聞く

アブドッラー国王宗教・文化間対話のための国際センター(KAICIID)には、イスラームはじめユダヤ教、キリスト教、ヒンドゥー教など各宗教の指導者が理事として名を連ねています。その中の一人、デビッド・ローゼン師(米国ユダヤ人委員会諸宗教間関係国際部長)はWCRP(世界宗教者平和会議)国際委員会会長を務めるなど本会とも親交が深く、庭野光祥次代会長を理事に推薦した一人でもあります。ローゼン師に同センター開所の意味合い、光祥次代会長への期待などを聞きました。

――イスラーム主導による対話センター設立の意味合いは。

諸宗教対話のイニシアティブがアラブ・ムスリム世界から、それも二つの聖地を有するサウジアラビアから示されたのは、非常に重要なことです。このイニシアティブには、保守的、閉鎖的であり、多元的でないといった懐疑的な意見もあります。しかし、それ以上にポジティブな面、期待できる点があると私は思います。この取り組みの輪は広がり、手と手を携えて諸宗教の友情が育まれていくでしょう。宗教的多元性、信教の自由、女性の権利などをサウジアラビアが十分に保障しているとは言えませんが、だからこそ、それらを促進するために、私たちがこのイニシアティブを支持していくことが必要なのです。ムスリム世界がより多元的な社会となるために、このイニシアティブは大きな機会であるととらえています。

――光祥次代会長を理事に推薦した背景や願いは。

理事の一員には仏教徒の代表が必要でした。また、理事の大半が男性であり、女性が望ましいとも考えました。国際的には、女性の宗教指導者は決して多くはありません。また、諸宗教対話を推進している立正佼成会の代表に就任して頂くことは、日本を代表するという意味合いもあります。もちろん、推薦の背景にはWCRPが関係しています。積極的な推薦の意見に、理事の皆さんが賛同してくれました。光祥さまは、個人としても重要な資質をお持ちですので、理事会を大変豊かにしますし、ご就任は非常に喜ばしいことです。

――本会会員にメッセージを。

庭野日敬開祖さまは諸宗教協力に対して先見の明を持たれていました。そして、すべての会員の皆さま、開祖さまのお子さまたち、なかんずく会長先生がその方向に進まれています。貴会は世界共同体の一部として、個人を尊重し違いを認めながら、普遍的に人類のために、よりよい世界のために取り組みをされています。その意味で、貴会の考え、祈り、支援がこのセンターの対話には必要であり、各理事が貴会のリーダーシップを認識することが重要だと考えています。


ウィーン市内のホテルで再会を喜ぶローゼン師(左)と光祥次代会長

(2012.12.07記載)