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2013年07月04日 IPCR国際セミナー 各セッションから

7月4日から6日まで行われたIPCR(韓国宗教平和国際事業団)の国際セミナーでは、二つのセッションが開かれ、日本、中国、韓国の宗教者らが活発な討議を行いました。その内容を紹介します。

◆セッション1 いのちと自然環境 三国に共通する思想 生かし合い共存を

ソウル大学のイ・チャンス教授が人と自然との関係について基調発題。「私たち人間が自分たちの都合のみを考えて自然法則を利用し、自然を完全に支配できるという考えは錯覚」と指摘しました。その上で、福島原発事故を例に挙げ、眼前の利便性を追求するあまり人類の生存が危機にさらされるような状況を改め、人間が自然の一部に過ぎないという観点から、個人の生き方や社会のあり方を自然の秩序に合わせていく重要性を示しました。これを受け、中国政法大学比較法学研究院の華夏教授が、「人と自然を一体の存在として捉える『天人合一』の思想によれば、人と自然とが対立することなく、平和的に共存できる」と語りました。大韓仏教曹溪宗社会局のソン・ウォン局長も「仏教の縁起の考え方に照らしてみても、人と自然は相互に依存し合いながら生かし合っている」と続けました。KCRP(韓国宗教人平和会議)のビュン・ジンヒュン事務総長は、「『天人合一思想』の本質は、日本、中国、韓国それぞれの人々に、おのおのの霊性として存在している。それこそが共にすべてのいのちを守るための共通基盤と言える。東北アジア全体が経済を優先して利益を求めるのをやめて、共通基盤を軸にし、互いのいのちを生かしながら自然と共存共栄する方向へと転換できたならば、それはある種の倫理的革命である」と述べました。

◆セッション2 いのちと国際協力 宗教者としての姿勢示し平和へ向け努力

関西学院大学の山本俊正教授が基調発題を行いました。山本教授は現在、国連の人権理事会が平和を一人ひとりの権利として議論し、「平和への権利」を規範化しようとしている動きに着目。平和の主体が国家ではなく人間であり、戦争によって「いのち」への脅威が高まった時でも、国民や団体が国に対して平和を求めることによって、その脅威から解放される権利の素晴らしさを説き、「東北アジア平和共同体構築の担い手は国家ではなく、共同体を構成する私たち一人ひとりである」と強調しました。
また、世界平和を実現するためには、日本の平和憲法がその基軸になることを指摘。憲法9条は、日本が再び戦争を起こさないための歯止めのみならず、アジアの人々のいのちを守り、三国の国際協力に大きく貢献するとの見解を示しました。
これを受けて、大西英玄清水寺執事補は、「文化や技術の交流、交換留学奨励、諸宗教対話などの小さな縁の入り口をもっとたくさん設けることが、個人の国際交流につながり、国際協力の大きな礎になる。そこに宗教者がどう関わっていけるかが重要」と述べました。
また、IPCRのヤン・ドクチャン理事は、共同体構築のための具体的な実践として、東北アジアの平和と和解をもたらす宗教者の祈りの会の開催や、戦争、核保有、自然破壊などを克服するための東北アジア宗教者によるキャンペーン展開を提案しました。

(2013.07.12記載)