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2015年11月06日 WCRP日本委と長崎県宗教者懇話会 核廃絶に向け科学者と宗教者が対話集会 


対話集会では、核兵器廃絶に向け協力し合う意向が確認されました

WCRP(世界宗教者平和会議)日本委員会と長崎県宗教者懇話会による「核兵器廃絶に向けた科学者と宗教者との対話集会」が11月6日、長崎市の長崎カトリックセンターで開催されました。これは、核兵器と戦争の廃絶を目指す科学者の国際会議「第61回パグウォッシュ会議世界大会」(1~5日、長崎市。パグウォッシュ2015組織委員会主催)を受け、科学者と宗教者が意見を交換し、共に核兵器廃絶に取り組んでいくことを目的としたものです。パグウォッシュ会議国際評議員をはじめ、国内外の宗教者や科学者、市民ら約120人が参集しました。同日本委と同懇話会は閉幕に当たり、「共同アピール文」を発表しました。

1954年、米軍の水爆実験による第五福竜丸の被曝(ひばく)事故が発生、翌年に物理学者のアルベルト・アインシュタイン博士らが「核兵器が人類の存続を脅かしている」との宣言を発表したことを契機に、パグウォッシュ会議が発足しました。57年には、ノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹、朝永振一郎両博士はじめ10カ国22人の科学者がカナダ・パグウォッシュに集い、第1回の会議が行われました。
広島、長崎に原爆が投下されて70年が経つ現在、アメリカ、ロシアをはじめ核保有国が有する核弾頭は、世界中で約1万6000発に上るといわれています。こうした現状を踏まえ、科学者と宗教者が核兵器廃絶への道筋を共有し、その歩みを促進することを目的に同対話集会は実施されました。
冒頭、野下千年同懇話会会長(カトリック長崎大司教区司祭)による開会あいさつ、中島正德氏(長崎県被爆者手帳友愛会会長)の「被爆者証言」に続き、イギリスの物理学者でパグウォッシュ会議国際評議員のクリストファー・ワトソン氏、杉谷義純WCRP日本委理事長(天台宗宗機顧問)が『科学者と宗教者の責任』をテーマに基調発題に立ちました。ワトソン氏は、核軍縮の取り組みの経過と将来的な見通し、核兵器使用による自然環境への影響について説明。テロ組織に核兵器が流出する危険性なども指摘しました。杉谷師は、核兵器禁止条約の交渉開始を各国政府に要請してきた宗教者の取り組みを紹介した上で、核抑止論の問題点に言及。他国に対する不信は核使用の可能性を高めるとして、「まず不信を除去する国際対話が急務」と訴えました。
続くパネルディスカッションには、同国際評議員のゲッツ・ノイネック氏やアクロニム軍縮外交研究所所長のレベッカ・ジョンソン氏、杉野恭一WCRP国際委員会副事務総長ら6人がパネリストとして登壇。ノイネック氏らは科学者の立場から、科学技術の平和利用や科学者の倫理規範、核軍縮に関連する条約の強化と合意に向けた国家間対話の必要性などについて考えを示しました。ジョンソン氏は、「宗教者と科学者は知識と考え方を共有すべき」と主張しました。一方、宗教者からは、核兵器廃絶に向け継続した科学者へのアプローチ、宗教者と科学者による国際的なネットワーク構築の重要性が語られました。
「共同アピール文」では、今回の集会を「科学者と宗教者の対話の出発点」と位置付けるとともに、同日本委と同懇話会により、宗教、倫理、道徳的立場から、核兵器廃絶に向けた責務を果たしていく意向が表明されました。
なお、パグウォッシュ会議世界大会には、神谷昌道ACRP(アジア宗教者平和会議)事務総長シニアアドバイザーが出席しました。

クローズアップ「科学者、宗教者の対話集会から 長崎」 核兵器と戦争の廃絶――深い精神性こそ未来の鍵

(2015年12月17日記載)