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2016年08月02日 第1セッション 核兵器の脅威は全人類共通の課題

開会に併せて開かれた第1セッションでは、杉野恭一WCRP/RfP国際委員会副事務総長を議長に、ガンジー開発財団創設者で同国際委共同会長を務めるエラ・ガンジー氏、マーシャル諸島公使のアネット・ノート氏が発題に立った。


核兵器の脅威や非人道性を訴え、廃絶に向けた世界の動きを発表する発題者たちの意見に、真剣に耳を傾ける宗教者たち

ガンジー氏は、祖父であるマハトマ・ガンジーが提唱した「非暴力主義」によって、南アフリカとインドで、暴力に訴えずに人権回復や独立への運動を進めた歴史を紹介。人間は人種や宗教の違いを恐れて対立してしまうため、多様性を認め、自分と違う相手を受け入れるべきと訴えた。
さらに、現代は通信手段の発達で「世界が小さくなった」と述べ、「他者を知ることで、意見が異なるからといって衝突する必要はないことが理解できる」と主張した。
次いで、ノート氏は、1954年3月1日に米国がビキニ環礁で行った核実験(通称「ブラボー実験」)に言及。15メガトンという世界最大の核爆弾が爆発し、その威力は「広島に落とされた原子爆弾7200個分で、広島の爆弾約2個分が12年間、毎日落とされたのと同じこと」と説明した。その上で、昨年亡くなった夫は、マーシャル諸島の市長として死の直前まで被害の補償をめぐって米政府と交渉し、再定住信託基金の条件修正など島民の生活を改善するために尽力したと伝えた。
また、実験に巻き込まれて被曝(ひばく)した日本の漁船「第五福竜丸」を挙げ、核兵器によってもたらされる苦しみは国境を超えると強調した。さらに、「核の破壊を目の当たりにした者として、われわれと日本は道徳的責務を負っている」と話し、国際司法裁判所(ICJ)に対して核兵器保有国の軍縮義務違反を訴えた自国の取り組みを説明。「海で世界はつながっており、すべての子供や孫のために、核の負の遺産が終わる日を目指して努力しなければならない」と力説した。
この後、元国連事務次長の明石康氏、パックス・クリスティー・インターナショナル国連代表のジョナサン・フレリッチ世界教会協議会シニアコンサルタントがあいさつ。この中で明石氏は、オバマ米大統領が、2009年4月のチェコ・プラハと、同年12月にノルウェー・オスロで核廃絶に関する演説を行ったのに続き、今年5月に広島市の平和公園を初めて訪れ、原爆死没者慰霊碑前で核兵器の非人道性について言及したことに対し、「祈りに基づいた感動的な演説」と評価した。その上で、「核廃絶を成し遂げるためには、政治と倫理という両面から問題を照らし、一人ひとりが自分の考えに基づいて答えを出すしかない。そういう意味で宗教は大きな助けになる」と述べた。
これを受け、フレリッチ氏は、核軍縮に向けた段階を信号機の赤・黄・緑の3色で示し、187の非核保有国のうち156カ国は「緑信号、つまり核軍縮へと進み、核のない世界とコミットしている」と分析。一方、黄色は核に依存している国で、「日本は黄色から、時には交差点で赤に戻ることもある」と指摘し、被爆国である日本が核軍縮に向けて道を外れることはあってはならないと訴えた。その上で、核を保有する国に核廃絶への進捗(しんちょく)が見られない現状を憂い、「すべての国が赤から緑へとそろっていかなければ」と、宗教者を含めた各界のさらなる協力の必要性を主張した。

(2016年8月25日記載)