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2016年09月02日 「 IPCR国際セミナー 2016」 日中韓の宗教者、研究者らが横浜普門館に集う


東北アジア平和共同体の構築に向け、日中韓3カ国の宗教者、研究者により議論が重ねられた

韓国宗教平和国際事業団(IPCR)主催の「IPCR国際セミナー2016」(共催・世界宗教者平和会議=WCRP/RfP=日本委員会)が9月2日から4日まで本会横浜普門館特別会議室で行われた。中国佛教協会のヤンジュ副会長、韓国宗教人平和会議(KCRP)のキム・グワンジュン事務総長など日本、中国、韓国の宗教者や研究者ら約80人が参集。日本からは、WCRP/RfP日本委の杉谷義純理事長(天台宗宗機顧問)、山崎龍明平和研究所所長(武蔵野大学名誉教授)らが出席。開会セッションで、庭野日鑛会長(同日本委会長)があいさつに立った。

庭野会長 開会セッションであいさつ


開会セッションでは庭野会長があいさつ

IPCRはKCRPが設立した平和活動を行うための法人。同セミナーは、日中韓3カ国の宗教者らが東北アジアにおける平和共同体の構築に向け、具体的な方策や諸課題などを議論するもので、2009年から毎年実施されている。今回のテーマは『東北アジア平和共同体構築のための課題』。日本での開催は、13年に続き2回目となる。
2日午後、開会セッションであいさつに立った庭野会長は、仏教の伝播(でんぱ)などを例に、歴史的に「中国は父なる国、韓国は母なる国である」と説明。「私どもの先達は、古くから文化、経済、社会的な交流を密にし、相互の信頼を培ってまいりました。そうした血の通い合った父母、兄弟とも言える関係を取り戻し、発展させていくことが、私ども宗教者に課せられた重要な役割」と述べた。
このあとヤンジュ中国佛教協会副会長、キムKCRP事務総長の謝辞に続き、同日本委理事で日本宗教連盟理事長を務める植松誠・日本聖公会首座主教が基調発題を行った。
翌3日は三つの会合が実施された。『朝鮮半島における紛争解決 宗教者の役割と責務』については、市民平和フォーラム共同会長のリ・スンファン氏(韓国)が発題を行った。この中でリ氏は核開発を進める北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の現体制とその思惑を詳述。その上で、政府間交渉と民間交流の拡大によって和平に向けた交渉を再開することが求められており、宗教界は政府に意見を提案するとともに、さまざまな民間組織と連携していくことが大切と語った。

和解を図り、共生社会実現へ
『和解のためのプロセスとメカニズム』をテーマにした会合では、同日本委の「和解の教育」タスクフォース運営委員と女性部会委員を務める松井ケティ清泉女子大学教授が、和解には加害側と被害側の両者が過去の出来事を正しく理解し、話し合う場を設けることが必要と強調。宗教者は、加害側が誠意をもって謝罪し、被害者が赦(ゆる)しの心を抱けるよう、宗教的精神に基づいて双方への共感を重ね、共生社会の実現に寄与していく使命があると述べた。
また「ACRP(アジア宗教者平和会議)セッション」では、ACRPの畠山友利事務総長が、ACRPが昨年に発表した「行動計画」を説明。東北アジアにおける諸宗教者による対話の経験と実績が、アジアの他の地域で対話を促進する上で参考になるとの見方を示した。
4日には、『人と人とのつながりと平和共同体』をテーマに議論。中国カトリック協会のレイ・シンイン副会長が発題し、近年、日中韓3カ国間で国民の往来が急増し、昨年は延べ約2400万人に上ったことを紹介した。さらに、経済や文化面などでの交流が盛んになる中、3カ国は共に成長しながら、一方で困難を担い合う関係にあると語り、「私たちは“同心同体”。共に、東北アジア共同体の構築に努力したい」と話した。

基調発題要旨 日本聖公会首座主教 植松誠師

(2016年9月 8日記載)