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2016年09月23日 本会一食平和基金「東日本大震災三県支援」 復興担う団体

東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手、宮城、福島の3県では、地震による地盤沈下や建物の倒壊をはじめ、津波による被災地域が広範囲に及んだほか、東京電力福島第一原子力発電所の事故被害に遭った地域もある。復旧や復興の進み具合は被災地によって大きく異なっている。本会一食(いちじき)平和基金の拠出先として、各県で復興支援に携わる団体の代表者に、これまでの経過や今後の展望を語ってもらった。

釜石市社会福祉協議会地域福祉課課長
生活ご安心センター副センター長
菊池 亮氏

「お茶っこサロン」で孤立防ぎ 新たな関係づくりに全力で

茶菓子を囲み和やかな雰囲気で行われる「お茶っこサロン」。参加者は泣いたり笑ったりしながら、ボランティアと自由に語り合う(写真提供・釜石市社会福祉協議会)

釜石では発災直後から、被災者へのこまやかな支援に力を注いできました。社協を中心に行政、民間団体などが情報交換を行い、被災者の抱える問題やニーズを探りながら各団体が補完し合い、サポートにつなげています。官民一体となったこの支援体制を、私たちは親しみを込めて“釜石スタイル”と呼んでいます。
特に被災者の心の傷を癒やすとともに悩みを吸い上げてきたのが「お茶っこサロン」です。現在、立正佼成会の皆さまをはじめ民間団体が、仮設住宅や復興住宅の談話室などで傾聴に携わってくださっています。佼成会の方々は、相手が満足するまでじっと耳を傾けてくださるので、被災者の方々からは厚い信頼が寄せられています。長引く仮設暮らしのストレスから、不安に襲われたり生きる意欲を失ったりする被災者もいます。ボランティアに悩みなどをこぼせたことで、問題解決につながったケースも少なくありません。被災者の生命にも関わる重要な役を皆さまに担って頂いています。
震災から5年半が経ち、各団体との連携がより密になってきました。これまで支援を継続できたのは、まさに一食平和基金によるご支援のおかげです。
発災当初は、生命を維持するために必要な物資の提供など、緊急支援が最優先されましたが、仮設での生活が始まると、住民同士の信頼関係の構築が新たな課題となりました。
かつては漁師町として結びつきが強かった沿岸部の住民も、震災をきっかけに分断され、隣近所の関係が無くなってしまいました。仮設では住民同士のトラブルもあり、人間関係の悪化が深刻な問題になっていました。住民間の関係修復のために、交流の場でもあるサロン活動は欠かせません。
今後は、仮設に残った方々の孤立を防ぐこと、復興住宅での新たな人間関係づくりが課題です。そうして被災者の生活再建を進めながら、将来に向けた新しい街をつくっていくことが最終的な目標です。被災者が故郷を離れずに若い世代にもとどまってもらえるような新生・釜石をめざして、全力を注ぎたいと思います。

渡波水産加工業協同組合専務理事
木村 安之氏

おいしい魚を提供できるよう 地域の方々と力を合わせて

震災から1年で再稼働した同組合の水産加工施設。本会一食平和基金の支援が復旧復興に充てられた

私ども渡波(わたのは)水産加工業協同組合が操業する石巻湾沿岸部は、震災による津波で大きな被害を受けました。鮮魚や水産加工品の冷蔵・冷凍施設、製氷・貯氷施設を運営していたのですが、4棟あった施設のうち2棟が全壊。残った2棟も、幸い主要な機械があった2階部分の浸水は免れたものの、ほぼ壊滅的な状態でした。
石巻は古くから水産業を生業(なりわい)として栄えてきた町です。漁業に従事する多くの組合員さんが、震災で廃業を余儀なくされました。また、漁を再開するにも、魚の鮮度を保つための冷蔵や製氷といった施設の整備が必要不可欠でした。事業を続けるか、廃業するか。誰もが先行きの見えない状況に不安を抱えていました。
そんな地域の組合員さん方の希望になればと、当組合では施設の復旧作業を急ぎました。立正佼成会の皆さまをはじめ全国から多くのご支援を頂き、おかげさまで震災から1年以内に、被害を受けた2棟を再稼働することができ、漁業関係者の早期の仕事復帰につながったのです。皆さまの温かなご厚意に、改めて心より感謝を申し上げます。
2014年には冷蔵・冷凍施設を1棟新設し、地域でも新たに漁業に従事する人が増えてきたことから、現在、当組合は震災前の活気を取り戻しつつあります。しかし、市内ではいまだに復興が遅れている地域もあり、水産業界でも、東京電力福島第一原子力発電所の事故による風評被害など、問題が山積しているのが現状です。
組合員の方々に安心して仕事をして頂けるよう、組合の運営をしっかりと維持していくこと、そして、PR活動などにも力を入れ、全国の皆さまに安全でおいしい魚を提供することが当組合の使命と受けとめ、これからも地域の方々と力を合わせて前進してまいりたいと思います。

NPO法人「ふくしま地球市民発伝所」代表理事
竹内 俊之氏

地域に根差した多くの活動を支え、今後も歩み続けたい

福島・郡山市内の被災障害者向け交流カフェ。集う人々はお茶と会話を楽しみ、充実した時を過ごす(写真提供・NPO法人しんせい)

「ふくしま地球市民発伝所(福伝)」は、2014年3月に設立されました。福島には、東京電力福島第一原子力発電所の事故被害者の支援や地元の復興に携わる市民団体が多数存在します。「福伝」は、それらの団体の連携と調整を図り、活動を促進する中間支援組織です。東日本大震災と原発事故後の福島の現状や経験を世界に発信し、現地のNPOや住民組織とのネットワークを生かした活動を展開しています。
原発事故の影響により、それぞれの団体には、長期的な支援活動が求められています。各団体の活動を支援するため、「福伝」は立正佼成会一食平和基金から「一食福島復興・被災者支援」事業を委託されました。
同事業では、14年に9団体を対象に計700万円を、15年には8団体へ合わせて600万円を寄託することができました。皆さまのご支援を地域の団体にお届けすることができ、心より感謝申し上げます。
支援先の活動は多岐にわたっています。市民への放射能の測定情報や正しい知識の発信、風評被害解消に向けた有機農家と消費者の橋渡し、再生可能エネルギーの普及推進など、どの団体も地域に根差した取り組みを展開しています。
この中で、NPO法人「しんせい」は、被災障害者の孤立を防ぐための活動として、福島・郡山市に避難するなどした障害者の交流を目的に、カフェスペース「サロン・しんせい」を運営しています。
ご自身にも障害があり、同団体の代表を務める白石清春さんは、「サロンは、おかげさまで立正佼成会の皆さまから昨年託して頂いた資金をもとに、今年の4月から就労継続支援事業所としてスタートすることができました。今後も、利用者一人ひとりの自立の手伝いができるよう、努力したい」と、喜びの声を届けてくださいました。
これからも、皆さまからの貴重なご支援を活用させて頂き、復興に向け、福島の人たちと共に歩んでまいります。

(2016年9月23日記載)